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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ

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尿1滴で分かる癌線虫検査(N-NOSE)ってどうなの?!

2023年10月09日

  • 院長ブログ

こんにちは、平島です。

今日は1日中雨ですね。

ランニングもできませんので、週2回やっている筋トレをしてみました。

あまり追い込んではいませんが、

週に2回程度

見せ筋を維持

するように、

ランやスイムでの筋肉を維持

できるように

時間を見つけて筋トレするようにしています。

診療中に最近よく聞かれるのが

「尿1滴で癌が分かる線虫検査ってどうなんですか?」

という質問です。

線虫に尿の臭いを嗅がせると

癌患者さんの尿に反応して線虫が集まってくるのでは?

という原理を使って

尿1滴で15種類のがんの

リクス

が分かる

と謳って、宣伝広告している

がん検査

というものです。

15種類のがんは

1,口腔・咽頭がん

2,食道がん

3,肺がん

4,乳がん

5,胃がん

6,肝臓がん

7,膵臓がん

8,胆のうがん

9.胆管がん

10,大腸がん

11,腎臓がん

12,膀胱がん

13,子宮がん

14,卵巣がん

15,前立腺がん

ここでのポイントは

1,最大のポイントは何のがんか分からない、どの種類のがんか分からない

という点です

2,あくまでリスクで判定であり、がんがあるかないかは不明

という点が2点目です。

がんに対する

感度と特異度

という概念があります。

感度は

がんであることをがんであると言い当てる確率

特異度は

がんでないことをがんでないと言い当てる確率

となります。

線虫検査(N-NOSE検査)の感度と特異度は

ホームページで調べてみると

感度 86.3%

特異度 90.8%

となっています。

一見高い確率のように見えますよね。

これを数字で紐解いてみましょう!

病気には

有病率

というどのぐらいの確率で病気になるかどうかの確率があります。

全部のがんで有病率を見てみると

男性で0.8%

女性で0.5%

ぐらいと言われています。

これを仮に

1%の人ががんになる

として計算してみます。

1万人の母集団で見ていくと

がんになる確率が1%であるため

100人の人ががんになる計算になります。

感度から見ていくと

100人のがん患者にN-NOSE検査をしたら

14人

が実際はがんなのに

がんではない、リスクが低いですよ→見逃し

これを

偽陰性

と言います。

と結果がでてしまいます。

特異度を見てみると

1万人のうち

有病率が1%と仮定しているので

9900人

はがんではない計算になります。

9900人のうち

特異度が約90%ですので

8910人

がんでない人を正しくがんでないと言い当てる事ができます。

逆に言うと

9900人−8910人=990人

990人はがんではないのに、がんのリスクが高いと判定されてしまいます。

この990人は

偽陽性

ということになります。

これを合わせると

がんのリスクが高いと指摘されるのが

感度のパートでで上手いこと拾い上げることができた86人(本当の陽性者)

特異度のパートで間違って拾い上げてしまった990人(嘘の陽性者)

を合わせて

86人(本当の陽性者)+990人(嘘の陽性者)1076人

となります。

1076人ががんのリスクが高いと判定されて、実際に本当にがんのリスクが高い人は86人なので

86÷1076x100=約8%

となり。

本当のがんのリスクを的確に言える確率は

8%程度

となります。

しかし、

この数字は

感度が86.3%、特異度が90.8%と高確率が本当であるといのが大前提

ですが、

この数値が実際はもっと低いとなると

本当のがんのリスクを的確に言える確率ももっともっと下がってしまいます。

最悪なのは

1万のうち

がんじゃないのにがんと判定された990人

一生がんではないのに、がんなのかも

という恐怖にさえなまれながら検査を受け続けないといけなくなってしまいます。

もう一つの問題点としては

N-NOSE検査でリスクが高いと判定されたら

15種類のがん検査を受けるのですが、

PET検査、胃カメラ、大腸カメラ、CT検査、MRI検査

などを受けることになると思いますが、

これらの検査は

保険診療で受けることができません!

N-NOSE検査は

薬機法の承認を受けた検査ではないので、保険診療の対象になっていません。

ですので、リスク検査で高いとなった人で検査を受ける人は

全て自費検査となります。

約10%も生じる偽陽性(嘘の陽性者)の方は

一生、自費で

何のがんか分からない嘘の陽性におびえながら

検査を受け続けないといけなくなってしまいます。

論文を読んだり、色々な記事を確認してみましたが、

色々な問題点が見えてきました。

1,がんと診断された人の比率が高い母集団での検討が多い

2,利害関係がある著者からの論文が多い

3,ブラインドテストではない

このブラインドテストとは

がんであるか、がんでないかを見分けができないように隠して実験する

という実験です。

このN-NOSE検査は

がんである尿

がんでない尿

初めから分かった上で

実験がされています。

これだと実験者の思い

実験結果をよく見せたいという知らず知らずの心の動きに結果が左右されてしまう可能性

が高くなってしまいます。

以上まとめると

1,15種類のがんが何か分からない(N-NOSE plus 膵臓がんという検査が7万円で出ていますが、)

2,診断率が低い

3,高リスク後の検査は全て自費

4,がんと診断された人の比率が高い母集団での検討が多い

5,利害関係がある著者からの論文が多い

6,ブラインドテストではない

という点からまだまだ勧められる検査ではないというのが患者さんへの結論です。

「がんと診断されていない健康な人を対象としたデータはなく

科学的なエビデンスが不足している

一般の人が受けると、多くの偽陰性、偽陽性がでる可能性がある

自分や家族、そして何より大切な私の患者さんにはお勧めしていません」

と診察室では話しています。

では、今週も頑張っていきましょう!

 

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この記事を書いた人

平島 徹朗 医師

平島 徹朗

医師

国立佐賀大学医学部 卒業。 大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、 多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。

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