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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2024年09月09日
こんにちは、平島です。
朝晩がだいぶ涼しくなり、ランニングするには良い季節になってきました。
診察室でも患者さんと話していると、
「そろそろ運動をしようかな」
という患者さんが増えてきています。
運動することによって胃腸の働きも良くなってきますので、
○食欲もわきます
○胃もたれなどが少なくなります
○便通が良くなります
○腸の蠕動が良くなり、お腹の張りなども少なくなります
などなど
胃腸にも良いことばかりですので、是非軽い運動から始めてみてください。
診察室で
「N-NOSE検査ってどうなの?」
って聞かれることがよくあります。
私は
「15種類のどの癌かも分からないし、精度にも問題があるので、スクリーニング検査としては意味ないですよ」
と
答えています。
N-NOSE検査とは
少量の尿を提出して
がんの
現在の「リスク」
を判定します。
将来的にがんに罹るかどうかではなく、
今現在身体の中にがんがあるかどうか?
のリスクです。
線虫は臭覚が発達しているので、
がん患者の尿には独特の臭いがあるため線虫が近づき、
健常者の尿からは線虫が逃げる
性質を利用した検査です。
15種類のがんの現在の「リスク」を一度に判定できるということを売りにしています。
15種類のがんとは
○口腔・咽頭がん
○食道がん
○胃がん
○肺がん
○肝臓がん
○胆管がん
○胆のうがん
○膵臓がん
○大腸がん
○腎臓がん
○膀胱がん
○前立腺がん
○子宮がん
○卵巣がん
○乳がん
です。
ただし、
リスクが高いと判定されても
15種類のがんのうち
どのがんのリスクが高いかは分かりません!
リスク判定は
A〜Eの5段階で
A,Bはリスクが低い
Cはリスクが中程度
D,Eはリスクが高い
と判定しています。
ちなみに私が今年受けたN-NOSE検査結果は
限りなくDに近いC判定
でした。
さらに
N-NOSE検査のデメリットとして
高リスクと診断されて精密検査を行う場合は
全て自費診療
となる点です。
15種類のがんのどれかも分からない、検査の精度も高くない
となると
15種類のがん全ての検査を
自費で永遠に行わないといけなくなってしまいます。
N-NOSE検査で陽性となって、医療機関を受診するとまずは
自費でPET/CT検査を受けることになります。
PET検査とは
がん細胞がブドウ糖を取り込みやすい性質を利用した検査で、ブドウ糖に似た放射性物質を注射して、全身を撮影すると、
がんの部位に取り込まれるとがんの判別ができます。
PET検査も全く万能ではなく、ブドウ糖に似た放射性物質が取り込まれにくい臓器も多いです。
PETで判定が難しい臓器は
○脳
○肝臓
○胃・大腸・食道などの消化管
○腎臓と膀胱
などが挙げられます。
特に
胃や大腸や食道は
内視鏡検査でないと早期がんはまず分からない
ですね。
元々
PET検査が得意なのが、
がんのリンパ節転移や遠隔転移
などの転移性病変の発見のために用いられているのが本来の目的です。
元々は臓器のがんを見つけるために用いられていたのではありません。
ですから、現在は
PETとCTを組み合わせてがんの診断判定をしていますので、
PET/CT検査
という表記をみることが多いかと思います。
N-NOSE検査の精度に疑問を感じているドクターがかなり多く、今回全国調査が実施され
2024年9月1日にオンラインで開催された
「日本核医学会PET核医学分科会 PETサマーセミナー2024」
で発表されました。
全国調査は、
日本がん検診・診断学会の会員でPET検診に関わる放射線科医と日本核医学会PET核医学分科会ワーキンググループが
PET検査を実施している
全国の229施設にアンケートを送付して、
102施設から回答が得られたとのことです。
アンケートは
2020年10月から2023年9月の3年間
を対象に
N-NOSE検査をきっかけにPET検査を受けた受診者数
その後にがんと診断された件数
その場合のがんの種類
などについてアンケートを行っています。
施設によってはPET/CT検査の他にも内視鏡検査やエコー検査なども行っている施設もあるとのことでした。
発表によると
N-NOSE検査で高リスクと判定されたことをきっかけにPET検査を受けた人は
1053人(30施設)
でした。
そのうち、
実際にがんと診断された人は
22人
で
全体の
2.09%
さらに言えば
N-NOSE検査が対応している15種類のがんに絞ると
わずか10人
で
全体の
0.95%
でした。
約1%ということは
N-NOSE検査で高リスクと判定された
100人のうち1人くらいしかがんが見つからない
ということです。
高リスク群に絞って検査しても0.95%しかがんが見つからないのに
N-NOSE検査を受けた人全体で考えたら
0.000。。。。。%
ぐらいの精度でしかないので、これはがんのスクリーニング検査には適さないと思います。
このような精度であることを考えると、
むしろ怖いのは低リスクと判定された人
の方に注意しないといけないかもしれません。
低リスク群が偽陰性である可能性
も考えておかないといけないと思います。
以上の事を考えると
N-NOSE検査はがんのスクリーニング検査には適していない
と思います。
胃がん、大腸がん、食道がんは内視鏡検査が適切ながんのスクリーニング検査
ですので、
定期的に内視鏡検査は受けていくようにしましょう。
では、今週も頑張っていきましょう!
この記事を書いた人
平島 徹朗
医師
国立佐賀大学医学部 卒業。 大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部など、 多くの病院・内視鏡専門クリニックで消化器内視鏡診断・治療を習得後、2011年たまプラーザ南口胃腸内科クリニック開院。