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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2021年08月07日
こんにちは。副院長の東です。
週末は台風が関東地方に接近する様です。
暴風、暴雨の可能性があるようなので身の回りの安全を確認しましょう。
今日はピロリ抗体価について考えてみます。
胃がんの約90%はピロリ菌が原因であると考えられています。
診断方法として代表的なものが、胃がんABCリスク検診で用いられる血中ピロリ菌抗体価です。
ABCリスク検診については内視鏡チャンネルの動画で詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=P64jCpv9oAg
ピロリ菌を除菌し、除菌に成功しすると体内の免疫グロブリンであるIgG抗体は産生されなくなります。
しかし除菌治療後のピロリ菌抗体価の長期的な推移についてはよくわかっていませんでした。
出典;国立がん研究センター予防研究グループHP
今回、国立がん研究センターの予防研究グループの研究結果が明らかになり、
ピロリ菌除菌治療したグループと未治療のグループのピロリ菌抗体価と比較すると、
● 除菌治療後では76.8%減少
● 1~5年以内で88.2%減少
● 6年以上で91.5%減少
抗体価は除菌後に減少していることが分かりました。
また、抗体価10以上のピロリ菌抗体陽性者の割合も調べられていますが、
● 除菌治療後1年未満で41.0%
● 1~5年以内で16.0%
● 6年以上で11.0%
1年で区切ると4割の人がまだ抗体価10以上であり、ピロリ菌陰性と判断されるまでにはやはり時間がかかります。
つまり、除菌しても血中ピロリ菌抗体が陰性化(10未満)するまでは1年以上かかる訳です。
https://cebp.aacrjournals.org/content/29/2/420.long
当院にもピロリ菌除菌成功後1年以内に胃がんABCリスク検診を受けてしまい、
抗体価陽性のためピロリ菌感染と判定されて来院した方がいます。
ピロリ菌除菌し尿素呼気試験や便中抗原で陰性化を確認した方は、
まずピロリ菌除菌は成功していますので、以後ABCリスク検診は受ける意味がありません。
ABCリスク検診は毎年受ける検査ではない
ピロリ菌除菌成功後はABCリスク検診は必要ない
除菌後も胃がんの早期発見のために定期的な胃カメラが必要
ピロリ菌に関してわからないことがあればぜひご相談ください。
この記事を書いた人
東 瑞智
医師
北里大学医学部を卒業。北里大学病院消化器内科学講師として、消化器がんの内視鏡診断・治療、抗がん剤治療だけでなく、難治性逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などの消化器良性疾患の治療に従事。2020年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。北里大学医学部消化器内科学非常勤講師。