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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2022年08月31日
たまプラーザ南口胃腸内科クリニックの久津川です。
今回は、「ピロリ菌はいつ除菌するのが良いのか?」というお話です。
結論からいうと、理想的には「なるべく若いうち、中学生以上」が望ましいです。
胃がんの原因は、ほとんどがピロリ菌の感染であるとされています。
3-5歳くらいに感染し、生涯を通じて胃炎が徐々に悪化し、胃の炎症から胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが発症します。ピロリ菌を除去することで、胃炎の進行がストップし、改善することで胃がんの発症を抑制できるとされています。
しかし、胃の粘膜の炎症(胃炎)がある程度進んでしまうと、除菌後に胃がんが発見されることがあります。
そこで、できるだけ胃がん予防を行うには胃炎がまだ進んでいない若いうちにのピロリ除菌が必要になります。
そもそも、ピロリ菌に感染しなければ、良いのですが、家族などから、そして井戸水などから自分の知らない子供のうちに感染してしまいます。
そして除菌理由から感染した場合は、より早期に除菌が勧められます(胃炎が進行しないうちに)。
では、いつ除菌した方が良いのでしょうか?
小学生まででは除菌治療をしても再感染するリスクがややあることや、除菌薬の内服が困難だったり、体格や体重の問題で除菌治療が行えないなどのリスクを考慮すると、大人と同じ除菌治療が可能な中学生を対象とするのが適切であるとされています。
しかし、日本の保険制度では問題があります。
まず、ピロリ菌の検査に関してですが、胃カメラでヘリコバクターピロリ胃炎という胃炎を認めた成人の患者さんのみ保険適用となります。つまり、胃カメラ検査が必須になります。そして、その検査で陽性となった方のみ除菌治療が保険適応で可能となります。
ここで矛盾が生じてしまいます。
より若いうちに除菌した方が良いのに、基本的に胃カメラ検査は成人に対して行うものであり、通常中学生では不必要な検査です。成人に対してのみ除菌治療が保険適応となります。
よって、中学生のピロリ菌検査や除菌治療は保険適応ではできません。
最近では、地方自治体が主体となり、胃カメラを行わず、ピロリ菌検査や除菌治療を行うようになっています。北海道、秋田県由利本荘市、にかほ市、兵庫県丹波篠山市、大阪府高槻市、大分県別府市など。
よって中学生でピロリ菌の検査を希望しても自治体で負担していない場合は自費となります。そして、ピロリ菌陽性になった場合、除菌治療も自費となります。
中学生に自費で除菌している施設は多くはありません。
よって、除菌は若いうちにした方が良いが、成人になってから行うのが通常となります。
今後、研究がすすめば中学生の保険適応も可能となるかもしれませんが、まだまだ時間がかかりそうです。
この記事を書いた人
久津川 誠
医師
国立熊本大学医学部を卒業。 世界消化器内視鏡学会より国際的優良施設として認定されている昭和大学横浜市北部病院で、内視鏡検査に関する高精度な診断・治療、さらには痛みの少ない大腸内視鏡の挿入法などを研究。 2015年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。