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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2023年03月29日
たまプラーザ南口胃腸内科クリニックの久津川です。
今日は、「痛み止め飲んでいませんか?」というお話です。
痛み止めの中でも非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs (エヌセイズ)とは、Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)というタイプのお話です。
NSAIDsには有名なもので、アスピリン(バファリン®など)、ロキソプロフェン(ロキソニン®など)、ジクロフェナク(ボルタレン®など)などがあります。
体の中で炎症や痛み、発熱などをおこす原因となる物質にプロスタグランジン(PG)というものがあります。このPGは体内ではアラキドン酸という物質からシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きなどによって作られます。
NSAIDsは、このCOXを阻害することでPGがつくられるのを抑え、炎症や痛み、発熱などを抑える作用(解熱・鎮痛・抗炎症作用)を利用した薬剤です。
COXにはいくつかの種類があります。そのうちCOX1という酵素は胃粘膜保護や血小板凝集(血液が固まりやすくなる)などに関わっています。そのためNSAIDsは胃腸障害(消化器症状)を引きおこしたり、血小板凝集を抑え血液をサラサラにするなどの作用をあらわす場合もあります。
COXの種類のうち、痛みや炎症、発熱などに深く関わるCOX2をより選択的に阻害する薬(セレコキシブ〔主な商品名:セレコックス〕など)が開発されて、よく使われています。この薬はCOX2選択的阻害薬とも呼ばれ、胃粘膜保護などに関わるCOX1に対する作用が少ないため、胃腸障害などの副作用が一般的なNSAIDsに比べて少ないメリットがあります。
NSAIDsを服用すると約 10~30% の頻度で胃潰瘍発症が認められると報告されている.
さらに胃潰瘍や胃炎を含めた胃粘膜傷害は60%の頻度と報告されています。
それほどNSAIDsは胃の粘膜を荒らしてしまいます。
NSAIDs 潰瘍発症 のリスク要因も検討されていて,
高齢(65 歳以上)、消化性潰瘍の既往、抗凝固薬と抗血小板薬の併用、ピロリ菌感染者などがリスク因子です。
NSAIDsによる胃潰瘍など胃粘膜傷害を防ぐために、多くのケースで胃粘膜を保護する胃薬が併用されていますが、日本人を対象に臨床試験を行った結果、予防効果は不十分と報告されています。
一番奥処方されているのが、レバミピド(商品名はムコスタ)です。
実は、NSAIDsとレバミピドを飲んでも胃粘膜障害の予防には不十分なのです。
短期間や屯用では多少の効果は認められていますが、長期に服用する際には注意しましょう。
一番効果的なのはプロトンポンプインヒビター(PPI)という胃薬です。
長期的に飲む場合で、NSAIDs潰瘍のリスクが高い場合は医師と相談しましょう。
*ロキソニンを数日飲んだだけで出来た胃粘膜障害
*ボルタレン座薬を1か月使用して出来た胃潰瘍(座薬を使用しても粘膜障害、潰瘍のリスクがあります)
この記事を書いた人
久津川 誠
医師
国立熊本大学医学部を卒業。 世界消化器内視鏡学会より国際的優良施設として認定されている昭和大学横浜市北部病院で、内視鏡検査に関する高精度な診断・治療、さらには痛みの少ない大腸内視鏡の挿入法などを研究。 2015年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。