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たまプラーザ南口胃腸内科クリニックブログ
Clinic Blog
2023年11月12日
こんにちは。副院長の東です。
雨が降り、長袖、上着を着ないと寒く感じるようになりました。
週明けは、最低気温8℃の予想です。
真冬並みの気温ですので、寒さ対策が必須です。
酸分泌抑制薬長期使用の弊害は?
逆流性食道炎に対する治療として、酸分泌抑制薬の投与は重要です。
PPIやP-CABと呼ばれる胃酸分泌を抑える薬が必要なケースは多いです。
食事療法や理学療法が重要であることはいつもお話していますが、
やはり薬物療法が必要で、著効する方もいます。
長く使っていて副作用はありますか??
しばしば質問されることが多い内容です。
ここで胃酸を長期に抑える事のデメリットを考えてみましょう。
論文等で議論されている懸念事項は・・・
✓ 胃酸が少なることでの胃での消化力低下
✓ 胃ぜん動運動の低下
✓ 認知症の増加
✓ 骨粗鬆症の増加
✓ 心血管系疾患のリスク増加
✓ 誤嚥性肺炎の増加
上記が挙げられます。
ここからは個人的な意見として話を進めていきたいと思います。
上から2項目は、機序を考えると起こり易いことです。
胃酸の働きは、pH2と強力な酸の力で物理的に食べ物を分解します。
そして胃酸が少なくなれば、胃酸過多に伴う胃痛逆流症状は軽減しますが、
その状態が続けば、胃酸の絶対量が不足して胃での消化力も落ちる可能性が高くなります。
胃酸が長期的に少なくなれば、消化する必要がないと体が感じて胃のぜん動運動も弱くなりえます。
ただし、長期服用しなければ症状が改善しない方もいるので、ぜん動運動改善薬の併用が考慮されます。
下の4項目は、判断が難しいと考えています。
論文では多数の患者さんのデータで解析していますが、一定の見解を得ることが出来ていません。
つまり、ある論文では起こり易いと結論され、ある論文では関連性は低いと結論付けられているのです。
認知症や骨粗しょう症は、年齢や内服している他剤の影響が大いに関係すると思いますし、
心血管系疾患のリスク増大が明らかであれば、発売中止になるくらいのインパクトです。
しかも、胃酸分泌抑制薬とアスピリンとの合剤も販売されています。
(狭心症や動脈硬化のため血栓症予防でアスピリンを使用されている方も多いと思います)
誤嚥性肺炎に関しては、胃酸で細菌やウイルスを死滅させる効果があるので、
高齢になれば、胃からの内容物が肺に間違って入ってしまう誤嚥のリスクは高くなりえます。
しかし、健康な方で起こることは少なく、何らかの疾患でベッド上の生活が多く横になっている方でのリスクだと思います。
逆流性食道炎を含めた、いわゆる胃食道逆流症の治療には胃酸分泌抑制薬は必要です。
内服のタイミングを工夫したり、ぜん動運動改善薬を併用することも大事なポイントです。
メリット、デメリットのバランスを考慮して最善の方法を見つけていくことが重要です。
この記事を書いた人
東 瑞智
医師
北里大学医学部を卒業。北里大学病院消化器内科で、消化器がんの内視鏡診断・治療、抗がん剤治療だけでなく、難治性逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などの消化器良性疾患の治療に従事。2020年より、たまプラーザ南口胃腸内科クリニック勤務。