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一般診療
General Practice
目次
ピロリ菌は1983年 にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見されました。
約3×0.5μmの大きさのらせん状をした細菌で、図のように4~8本のしっぽがあります。このしっぽをヘリコプターのように回転させて移動し、胃の前庭部(pylorus)に生息することから、ヘリコバクター・ピロリと名付けられました。
日本では年齢とともにピロリ菌を持っている人が増えていき、感染率が上昇します。最近の報告では10代の感染率は2%、20代は10%、40代が20%台まで減ってきています。しかし70代は50~60%くらいと、高齢者では相変わらず半数を超えています。
人から人への経口感染(口から口)や井戸水などの水からの感染がほとんどで、家族内での両親や祖父母などから子供への感染(食べ物の口移しなど、一度口に入れた食べ物を子供に与える事)などで多くが5歳までの幼少時に感染します。
ピロリ菌が胃に感染するとピロリ菌から胃の粘膜に病原性タンパク質CagA(キャグA)が注入され、慢性活動性胃炎と呼ばれる持続的な炎症を引き起こし、次第に胃粘膜が萎縮(胃粘膜が薄くなる現象)していきます。胃粘膜の萎縮とは言い換えると「胃の老化現象」のことで、胃酸の分泌が減少していき、消化不良や胃の不快感などの症状が出現してきます。
一度ピロリ菌に感染すると、年齢とともに胃粘膜の萎縮(胃の老化)が次第に進んでいき、強い胃粘膜の炎症が持続して、胃がんの発生リスク(ピロリ菌未感染者の約10倍以上)がより高くなることが判明しています。
ピロリ菌の感染者は、全くピロリ菌に感染したことがない人に比べて胃がんのリスクは10倍以上であることが報告されています。ピロリ菌に感染しているからといって、必ず胃がんになるとは限りませんが、胃がんを発症する人の99%がピロリ菌感染者だというデータがありますので、注意が必要です。
自治体などが行っているABC 検診とは、血液検査にてヘリコバクター・ピロリIgG 抗体検査(採血)でピロリ菌感染の有無を、ペプシノゲン(PG)検査(こちらも採血)で胃粘膜萎縮度を調べ、その結果を組み合わせて胃がんのリスクをA,B,C,Dの4群に分類して評価する検診です。この分類法には様々な問題もあり、現在あらゆるところで議論されている最中です。おおよその指針に過ぎませんので、これだけで胃内の状態や胃がんの有無を評価することにも色々な人から疑問の声も挙がっています。検診などで大人数をさばく場合にはある程度有効かもしれませんが、これだけで胃がんの有無は分かりませんので、注意が必要です。下記のような指針となっていますが、当院では胃がんの早期発見のために1年に1回の胃カメラ検査をお勧めしています。A群だからと言って胃がんにならないということでは決してありません。
ピロリ菌を退治する除菌治療を受けることをお勧めします。6ヶ月以内に胃内視鏡検査を受けられていない場合は保険診療での除菌治療を行う場合は、胃内視鏡検査が必要となります。1次除菌治療は2種類の抗生物質と1種類の胃薬を1週間1日2回服用します。服用中の1週間は禁酒になりますので、飲酒の機会がない時期に服用されることをお勧め致します。当院では、1次除菌治療薬内服後の1か月後に尿素呼気試験で除菌が成功したかどうかを判定します。1次除菌を失敗した場合は、保険適応で2次除菌を行うことができます。
ピロリ菌の除菌治療は基本的に2回目までが保険適応となります。3回目の除菌治療である3次除菌からは保険適応がなく、自費診療(当院では3次除菌お薬料金2万6千円+除菌判定検査料金約1万円で合計3万6千円(税抜き))となります。3次除菌に関しては、まだ使用するお薬の内容がきちんと決まっていませんので、各医療機関ごとに使用するお薬の種類が違ってきます。そのため、3次除菌の治療を行っていない医療機関も多くあります。当院では、様々な文献などから現在最適と思われるお薬の組み合わせを考慮して、3次除菌を自費診療にて行っております。
原則としては高齢などの上限の年齢制限はありませんが、除菌治療による胃がんのリスク低下という目的を考えた場合、90歳の方に除菌治療を行って意味があるのかという問題も出てきます。下限の年齢制限ですが、薬事法で定められている除菌治療の効能効果の部分に『通常、成人には。。。。』と明記されており、未成年者に対する除菌治療の記載はなく、未成年者に対する除菌治療を行う場合には未成年の患者さんと保護者の同意が必要と思われます。
年齢のみで適応の有無を判断することはできませんが、80歳以上の方は、胃内の状態や基礎疾患の有無を総合的に担当医が判断して除菌をするか決定していますので、ご相談ください。基礎疾患がなく、本人のご希望がある場合にはご高齢であっても除菌治療を行ってよいと思われます。また、5歳未満の小さなお孫さんなどと接することが多い高齢者では感染源となる可能性もありますので、除菌治療を考慮した方がよいでしょう。
除菌療法を始めると、約10%程度の方に軟便・下痢・味覚異常などの副作用がおこる場合があります。また、肝臓の機能をあらわす検査値の変動が見られることや、まれに、かゆみや発疹など、アレルギー反応があらわれる人もいます。
特にかゆみや発疹などがある場合は薬を服用するのをやめて、担当医師にご相談下さい。
最近の研究で、ピロリ菌除菌後にピロリ死菌が胃から腸内に移行した後に血液中に吸収されることで発疹が出現する、ピロリアレルギーがトピックとなっております。抗生剤の副作用との判断が難しい場合があるので、担当医にご相談ください。