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Endoscopist Doctor's Knowledge
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で「大腸憩室」と診断されたことはありませんか?
また、腹痛で「大腸憩室炎」、血便が出て「大腸憩室出血」と診断されたことはありませんか?
今回は「大腸憩室」、「大腸憩室炎」、「大腸憩室出血」について解説します。
大腸内視鏡検査で「大腸憩室がありますね。」と言われた方は大変多いと思います。
大腸憩室炎について解説します。
大腸の壁に5~10㎜の袋状のへこみができた状態です。大腸の壁が腸管の外側に突出しています。
通常成人にみられる大腸憩室は生まれつきではなく、成人になってからできたものがほとんどです。
盲腸、上行結腸、S状結腸に大腸憩室はできやすく、多発する方も多くいます。
欧米人ではS状結腸に好発することが多く、日本人では右側結腸(盲腸、上行結腸)に多いといわれていました。しかし、近年の食習慣や生活様式の欧米化に伴い、日本人でもS状結腸に憩室がある症例が増えています。
5人に1人の割合で発症します。
憩室に便がはまりこんでいる内視鏡写真
大腸内視鏡(大腸カメラ)では、よく憩室に便が詰まっていることがあります。
腸管がぜん動運動をすることで便は排出されまうが、排出されない場合は細菌が繁殖し、炎症を起こし憩室炎を発症することがあります。
腸管内圧の上昇することで憩室が形成されます。食生活の欧米化で、肉食が多くなり食物繊維の摂取量が減少によって便を排出させようとする腸管運動の亢進、便秘、腸管内圧の上昇が原因と考えられています。もうひとつの原因は、加齢による腸管壁の脆弱(弱くなる)が考えられます。
ほぼ100%の症例は、大腸憩室があるだけで無症状です。大腸内視鏡検査の時に発見されることがほとんどです。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で偶然に発見されることがほとんどです。
CT検査でも発見されることがあります。
大腸憩室ではそれ以上の精密検査は必要ありません。
大腸憩室のみでは通常は無症状のため、治療は不要です。経過観察で大丈夫です。
大腸憩室出血はまれな症例ですが、突然発症し、大量の血便が出るため、重症化することもあります。大腸憩室出血について解説します。
大腸憩室だけでは無症状ですが、ごくまれに大腸憩室から出血することがあります。これが大腸憩室出血です。
頻度は次に解説する大腸憩室炎の3分の1程度であまり多くはありません。
高齢者に多く発症し、女性よりは男性に多く見られます。
喫煙、飲酒では大腸憩室出血のリスクは増加しませんが、肥満はリスクが増加すると報告されています。
大腸憩室出血の死亡率は1%程度とされています。
大腸憩室を走行する動脈が突然裂けて出血を来します。
低用量アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服で大腸憩室出血のリスクが増加します。近年では、これらを内服する患者さんが増加しており、大腸憩室出血は増加していま
腹痛を伴わない血便です。大量に出血している場合は頻回に血便(鮮やかな赤色、やや紫がかった色の便)が出ます。黒い便が出ている場合は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの上部消化管出血の可能性があります。
血便の症状はこんな感じです。便に血がついていた、トイレットペーパーに血がついていた、便器に血がついていた、便器の水が真っ赤だったなど。
https://www.tamapla-ichounaika.com/general/post-29072/
また出血量が多いと貧血が進行し、ふらつきや意識障害も発症します。
全身状態や出血量によりますが、基本的には洗腸剤という下剤を服用し「大腸内視鏡検査」を行うのがゴールドスタンダードです。大腸憩室は、盲腸や上行結腸など肛門から遠い右側結腸にも多く存在するため、一番奥の回盲部まで内視鏡で観察する必要があります。洗腸剤を使用しない場合は、便が邪魔をするため一番奥まで内視鏡を挿入することが非常に難しくなります。
大腸憩室からの出血や憩室内に露出血管が確認できれば、大腸憩室出血と診断できます。
貧血症状がひどい場合、血圧が低い場合は内視鏡検査より点滴による輸液や輸血が優先されることがあります。全身状態が悪い場合の大腸内視鏡検査は危険です。
また、造影CTで出血源を同定できることもあります。
憩室内に紫色の塊が詰まっています。これは血液と便が混ざった塊です。憩室出血は憩室を1個1個洗いながら、出血部位を同定していきます。
憩室内の血液の塊の内視鏡写真
大腸憩室出血の70-90%は、自然に出血が止まってしまうと報告されています。
大腸内視鏡検査時にすでに止血していることがほとんどです。出血している憩室が認められることはほとんどありません。
活動性出血(持続的に出血が観察される)や憩室内に露出血管(出血の原因とされる血管)が認められれば、クリップ法で止血します。露出している血管を直接クリップで止血する方法と憩室の入口部をクリップで全体をふさぐ方法のどちらかを選択します。
大腸憩室出血は70-90%が自然に止まってしまいます。そのため「大腸憩室出血の疑い」と診断されて医師からは「おそらく大腸憩室出血と思われますが、今は止まっているため経過観察で大丈夫です。」と言われることが多いです。
また、再び出血を起こす確率(再出血率)は1年後で20-35%、2年後で33-42%と報告されています。
自分で「様子を見て良いかな?」と判断するのは危険です!!何回も血便が出る場合は、必ず消化器内科を受診しましょう。
血便の回数や量が多い場合は緊急性があるため、早急に消化器内科、救急外来を受診しましょう。
医師が緊急性を判断し、緊急内視鏡検査が必要になることがあります。
血便がある方は、最初から内視鏡検査ができる消化器内科を受診しましょう。
大腸憩室炎は、必ず軽度から重度の腹痛を生じます。大腸憩室炎が右側の大腸(特に盲腸)に発生した場合は、「急性虫垂炎」との鑑別が非常に重要になります。炎症が強く、大腸に穴が開く(穿孔といいます)の場合は、命の危険が伴います。
大腸憩室炎について解説します。
上行結腸の多発する大腸憩室の内視鏡写真。一部の憩室には便がはまりこんでいる。
大腸憩室があるだけでは、ほぼ無症状です。しかし、憩室の中で細菌が繁殖してしまうと炎症を起こすことがあります。これが「大腸憩室炎」です。
40-60歳代では右側結腸(盲腸、上行結腸)に多く、高齢者でS状結腸に多く発生すると報告されています。
BMIが30以上の肥満女性で発症率が高いと報告されています。喫煙者では、重症になるリスクが高いとされています。
死亡率はうみがたまる(膿瘍)などの合併症が生じた場合は2.8%、合併症がない場合は0.2%と報告されています。適切に治療できれば、命を落とすことはほぼない疾患です。
大腸憩室内に便が入り込んで、細菌が繁殖し炎症を引き起こすことが原因です。
大腸憩室に便は通常でも詰まっています。通常は腸の動きによって出てくるのですが、詰まったままの状態が長く続くと憩室炎を起こすことがあります。
大腸内視鏡検査の写真です。憩室に便が詰まっています。
大腸内視鏡検査の写真です。便が排出された憩室です。
大腸内視鏡検査の写真です。排出された便塊です。
発症した憩室炎の場所に腹痛が生じます。炎症が強くなると発熱、吐き気、嘔吐なども生じることがあります。
右下腹部の憩室に炎症が起こると急性虫垂炎と区別が難しくなります。
症状や医師による診察で大腸憩室炎が疑われた時のゴールドスタンダードの検査は、「採血」「腹部CT検査」になります。
先ほども記載したように右下腹部に憩室炎では「急性虫垂炎」との鑑別が必要なため、腹部CT検査が大変重要になります。
大腸憩室炎治療後には、「実は違う病気だった‼‼」という大腸憩室炎以外の病気を否定するために大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることがガイドラインでもすすめられています。
腹部CT検査の写真です。上行結腸に丸く突出した憩室があります(矢印)。
腹部CT検査の写真です。上行結腸周囲の白くもやもやした部分が憩室炎の炎症です(矢印)。
軽症の場合には、外来で抗生物質の内服を行い経過観察とします。
腹痛が強い場合、採血での炎症反応が高い場合、全身状態が悪い場合、CTで膿がたまっている場合などは、入院治療が必要になります。医師の判断によっては、食事制限や腸管安静のために絶食にすることがあります。
入院の時は、抗生物質は点滴で投与することがほとんどです。
憩室炎のために腸に穴が開いて腹腔内に細菌や便がひろがると汎発性腹膜炎(腹部全体に広がる重症の腹膜炎)になります。このような場合は救命のために緊急手術が必要となることがあります。
腹痛、発熱などが続き改善しない場合は消化器内科を受診しましょう。大腸憩室炎は早期に治療をしないと膿がたまったり腸に穴が開いたりして重症化することがあるため、専門施設で適切な検査、治療を受けましょう。
先ほども記述しましたが、大腸憩室炎治療後には、「実は違う病気だった‼‼」という大腸憩室炎以外の病気を否定するために大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることがガイドラインでもすすめられています。
当院の大腸内視鏡検査の特徴は、「安全に苦しさと痛みに配慮した大腸内視鏡検査を提供する」「見逃しのない高精度な観察を行う」ということです。
これまで培ってきた内視鏡検査の経験を十分に活かして高精度で安全な内視鏡検査、治療を行うように努めています。消化器内視鏡学会専門医である内視鏡を専門とする医師が、各臓器のポイント毎にどのような内視鏡操作を行えば苦しさと痛みに配慮した検査になるのかを熟知していますので、安心してお任せください。
そしてみなさま各人に合わせた、最適な量の鎮静剤を考えて検査をしています。こちらも多くの経験により検査が苦しさと、検査後もしっかりとした目覚め・気分不良がないように配慮するように努めています。
まずはお気軽にご相談ください。