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おすすめ内視鏡豆知識
Endoscopist Doctor's Knowledge
日本では、年間100万人くらいの人が「がん」と診断されます(2018年データ)。
また、35万人くらいの方が「がん」で亡くなります(2020年データ)。
また日本人が一生のうちに「がん」と診断される確率は、
男性65.0%、女性50.2%程度とされています(2018年データ)。
日本人ががんで死亡する確率は男性26.7%、女性17.9%とされています(2020年データ)。
がんの中には、生活習慣の見直し(ダイエット、運動、禁煙、禁酒など)により「予防(なりにくくする)」することが可能なものがあります。しかし、いくら気を付けても、がんに絶対に「ならない」ということは不可能です。
最近では身近でがんと診断される方も多く、特に家族や親族、同僚などががんと診断されたことを聞くと「私は大丈夫かな?」と心配になるかもしれません。
今回はたまプラーザ南口胃腸内科クリニックで実際に診断した「咽頭がん」、「食道がん」の症例を紹介します。
早期がんでは、症状はなく偶然発見されています。進行がんになって、やっと症状が出ています。
・咽頭とは?
咽頭とは鼻の奥から食道に至るまでの食物や空気の通り道です。
咽頭は上・中・下の3つの部位に分けられ、各部位にがんができるとそれぞれ上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんと診断されます。扁桃腺や舌根は中咽頭に含まれます。
・咽頭がんの原因は何?
咽頭がんの発症要因は過度の飲酒、喫煙です。さらに上咽頭がんについてはエプスタイン・バールウイルス(EBウイルス)の感染、中咽頭がんについてはパピローマウイルスの感染が原因となることもあります。また、飲酒についてはフラッシャー(飲酒により顔が赤くなる人)と呼ばれる人が継続的に飲酒することで発がんする可能性が高いです。
エタノール摂取量では週に300グラム以上(1日平均2合以上)飲酒をすると咽頭がんにかかるリスクは3.2倍増加するとされています。
・咽頭がんの症状は?
早期にはほとんど症状が出ず、感じたとしてもわずかなのどの違和感、痛み程度です。がんが大きくなれば食事が通らなかったり、空気が通らず息苦しくなるという症状が出現します。また頸部リンパ節への転移を首のしこりとして感じ受診される方もいます。このような場合は耳鼻咽喉科を最初に受診することが多く、当院のような消化器内科を受診することはほぼありません。
*咽頭がんの主な原因は飲酒と喫煙なので、飲酒歴、喫煙歴を提示します。
症例は70歳代前半の男性です。
胃の不快感があり、人生ではじめての胃カメラ検査を受けました。
喫煙歴:タバコを吸ったことがない
飲酒歴:20歳からほぼ毎日、日本酒を2.5合
口の中に胃カメラを挿入すると小さな白色隆起と出血を認め、NBIでは茶色い不整な異常血管を認めました。生検では「がん」という診断でした。
がん専門病院で内視鏡治療をして、数年間再発せずに経過しています。
*咽頭にポリープのように盛り上がった白色隆起とその横に平坦なやや白色の扁平隆起を認めます。
*NBIモードに切り替えると茶色い線状の血管の不整(がんに特徴的)を認めます。
症例は80歳代前半の男性です。
十二指腸ポリープがあり、他院で定期的に胃カメラをしていました。家族が受診している、当院での胃カメラを希望されて受診されました。
喫煙歴:25年前に禁煙、禁煙までは20歳から1日20本
飲酒歴:毎日ビールや日本酒など合計3合程度
胃カメラを口に挿入すると口腔内がわずかに発赤(正常粘膜はピンク色)していました。
NBIにしてみると写真のように茶色い領域を認識しました。
これは異常な不整血管です。
生検でがんが検出されました。
範囲が不明瞭で広範囲のため、内視鏡治療はできず、放射線治療を行いました。
咽頭や食道のがんは扁平上皮癌というタイプで、放射線治療が大変有効です。
がん専門病院で放射線治療のみで完治しました。その後3年以上再発はしていません。
*咽頭に正常粘膜よりやや赤い領域を認めます。赤いドットが血管です。
血管が目立たないピンク色の領域が正常粘膜です。
*NBIモードに切り替えるとドット状の血管が目立ちます。これががんの血管です。
・ 食道がんとは?
食道は、咽頭(のど)と胃の間をつないでいる筒状の臓器です。この筒を構成している壁は、内側から外側に向かって粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、外膜という層から構成されおり、最も内側の粘膜上皮は重層扁平上皮という組織で覆われています。
日本人でみられる食道がんの90%以上は、この食道壁の一番内側の粘膜上皮である重層扁平上皮から発生する扁平上皮がんです。食道がん(食道扁平上皮がん)は60〜70歳の男性に発症しやすいと言われています。バレット食道から発生する食道腺がんは日本では約10%程度と少ないですが、欧米では食道がんの50%以上を占めると言われています。
食道がん(食道扁平上皮がん)は同時多発や異時性多発(時間をあけて最初にがんが発生した場所と違うところに新しいがんが発生する)しやすく、重複がん(食道がん以外の別の臓器にも同時または異時性にがんが発生する)の割合が約20%もあると報告されています。食道がんの重複がんとしては、胃がん、頭頸部がん(咽頭がん、喉頭がんなど)などが多いと報告されています。
・食道がんの原因は何?
食道がん(食道扁平上皮がん)の主な原因は、喫煙と飲酒です。毎日1.5合以上の飲酒や20本以上の喫煙をする人は、飲酒や喫煙をしない人に比べて30倍以上の発がんリスクがあると言われています。
最近の研究では、アルコールによる食道がんの発現が注目されています。飲酒により摂取されたアルコールが体内で分解されることによって生じるアセトアルデヒドは発がん性物質と考えられています。このアセトアルデヒドが顔を赤くする原因と考えられていて、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが生まれつき弱い人は、食道がん(食道扁平上皮がん)の発生する危険性が高いと報告されました。特に少量の飲酒ですぐに顔が赤くなっていた人が、だんだん飲酒に慣れて飲酒量が増えると、食道がんができる可能性が何十倍も高まると言われています。たくさんの飲酒を長期間続けるひと、喫煙と飲酒の両方の習慣がある人は、その危険性がより高まると考えられています。また、熱い物の摂取も食道がん(食道扁平上皮がん)の危険性を高めると考えられています。
・食道がんの症状は?
早期の食道がんでは食道粘膜の表面にわずかな陥凹を呈するぐらいの病変なので、症状を感じることはまずありません。
食道がんが進行してくると食道内を塞ぐようになり、食事の通過障害が出現してきます。通過に時間がかかるようになって、食べものが通過できずに充満してしまうと、嘔吐や詰まり感、胸やけなどの症状が生じてきます。
*食道がんの主な原因は飲酒と喫煙なので、飲酒歴、喫煙歴を提示します。
症例は50歳代後半の男性です。
健診で胃造影検査を行い、胃内に異常を認め「要精密検査」となり当院を受診されました。人生で初めての胃カメラ検査でした。
喫煙歴:20歳から1日20本
飲酒歴:毎日ビール700ml
胃カメラ検査では、食道粘膜にわずかな発赤を認め、NBIでは濃い茶色の領域を認めました。
生検で「食道がん」と診断され、大学病院で内視鏡治療を受けました。
わずか25分で治療は終了しました。
その後は再発なく、経過しています。
*周囲のピンク色の粘膜に比べ、発赤の強い粘膜を認めます。表面はやや凸凹しています。
*NBIモードにすると茶色い領域を認めます。茶色の細い線状のものががんの血管です。
60歳代後半 男性
定期検査目的で当院受診。
胃カメラでは、食道粘膜にわずかな発赤を認め、NBIでは濃い茶色の領域を認めました。
ヨード染色では不染色領域となり、がんと診断できます。
喫煙歴:17年前に禁煙、その前は1日20本喫煙
飲酒歴:毎日焼酎を1.5合
生検で「食道がん」と診断され、大学病院で内視鏡治療を受けました。
その後は再発なく、経過しています。
*周囲の正常の粘膜と比較して軽度発赤している領域を認めます。
*NBIモードにすると茶色い領域を認めます。NBIモードではがんが発見しやすくなります。
*ヨード染色を行うと食道がんの範囲が明瞭になります。
正常の食道粘膜細胞は細胞内にグリコーゲンを含んでいるため、ヨウ素・でんぷん反応により食道粘膜が茶色に染色されます。食道がんの細胞はグリコーゲンを含まないので茶色に染色されません。
症例は60歳代後半の男性です。
3か月前から食べ物がつまることがあり、最近は肉などある程度の大きさのものを食べると嘔吐することがあり当院を受診されました。胃カメラ検査は40年前にしてからしていませんでした。
喫煙歴:20歳から1日25本喫煙
飲酒歴:毎日ビール500ml
胃カメラ検査にて食道に腫瘍を認め、3分の2が閉塞していました。
大学病院で精査してstage IVb(リンパ節転移、多発肝転移あり)と診断されました。
今後、化学療法、放射線治療の予定です。
*食道内に大きな腫瘍を認め、食道の一部が閉塞しています
水分や細かいものは通過しますが、塊は通過しにくくなっています。
*さらに奥に行くと閉塞が強くなっていました。
症例は70歳代前半の男性です。
3か月前から胸やけや食道のつまりを感じていました。
最近はその症状が強くなり、体重が2か月で2キロ減少していました。
喫煙歴:4年前に禁煙、その前は1日20本喫煙
飲酒歴:毎日焼酎を5合
胃カメラ検査では食道に隆起性病変を認め、3分の2が閉塞していました。
さらに進むと直径10㎜の胃カメラが通過できませんでした。
生検で食道がんが検出され、大学病院で精査してstage IVb(リンパ節転移、多発肝転移あり)と診断されました。
今後、化学療法、放射線治療の予定です。
*食道上部に大きな腫瘍を認めます。この程度なら通常の食事は通ります。
*下部食道では腫瘍が食道全体にひろがり、隙間がほとんどありませんでした。
当院の内視鏡治療の特徴は、「安全に苦しさと痛みに配慮した内視鏡検査を提供する」「見逃しのない高精度な観察を行う」ということです。
これまで培ってきた内視鏡検査の経験を十分に活かして高精度で安全な内視鏡検査、治療を行うように努めています。
内視鏡を専門とする医師が、各臓器のポイント毎にどのような内視鏡操作を行えば苦しさと痛みに配慮した検査になるのかを熟知していますので、安心してお任せください。
そしてみなさま各人に合わせた、最適な量の鎮静剤を考えて検査をしています。こちらも多くの経験により検査が苦しさと、検査後もしっかりとした目覚め・気分不良がないように配慮するように努めています。
まずはお気軽にご相談ください。