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Endoscopist Doctor's Knowledge
ピロリ菌に感染していると、胃がんリスクが高いということを多くのメディアが取り上げたことで、ピロリ菌の除去に関心を持っている方もいるのではないでしょうか。
ピロリ菌に感染した方の中には、すでにピロリ菌除菌治療を受けている場合もあるかと思います。
ピロリ菌除去をしたら胃がんリスクがなくなると認識している人が意外に多く存在しますが、実はそうではありません。
そこで今回は、ピロリ菌除菌後の再感染と胃がんリスクについて解説します。
ピロリ菌とは長さ4ミクロンで、胃粘膜に住みつくらせん形の細菌です。
胃粘膜は胃が分泌する胃酸に覆われているので、ほとんどの細菌は死滅してしまいますが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という胃酸を中性化する酵素を分泌しているため、胃酸では死滅しません。ただピロリ菌が胃粘膜に住みつくだけなら、胃がんの原因にはなりません。
ピロリ菌が分泌するウレアーゼは、胃の尿素と反応しアンモニアを発生させます。発生したアンモニアによって、胃粘膜に刺激が起こり胃を守るための防衛反応による炎症が起きるので、どんどん胃粘膜が傷つけられてしまいます。
傷つけられた胃の粘膜細胞は、しだいにがん化していきます。ピロリ菌が除去されるまでこの炎症と修復を繰り返すので、胃に負担がかかりがん以外にもさまざまな症状が起きるのです。
つまり、胃を正常に保ちがんのリスクを軽減するためには、胃の不調を招かないためにもピロリ菌除菌が必要になります。
ピロリ菌感染の多くは5歳までの井戸水による感染と、ピロリ菌に感染した親から子への口移しによる食べ物や唾液による家庭内感染です。
近年では稀となりましたが、上下水道が整備されていない生活環境、つまり井戸水からの感染が考えられています。ピロリ菌感染者の多くは50歳以上の世代といわれ、その数は全体の感染者の約70%です。50代以上の方の中には、年齢が高ければ高いほど幼少期に井戸水を生活用水として使っていた方が多いため、世代の感染率が高いという報告があります。
乳幼児が食事する場面で、口移しの食べものまたは同じ箸や食器を使うことで唾液を介して感染します。家庭内母子感染の場合は、子が5歳までに感染する確率が高いとされています。最近の育児書などには、口移しや同じ箸を使わないことが推奨されており、母子家庭内感染の数は減っています。
自分自身の免疫システムが確立する前の5歳までに感染したピロリ菌は、長期にわたり増殖と死滅を繰り返し胃の粘膜に住み続けます。成長期や成人期など免疫力がある時期には活発化できませんが、ある程度歳を重ねると胃粘膜も老化しピロリ菌の影響が強く出てきてしまうのです。
ピロリ菌に感染したのが5歳なら、成人期にピロリ菌感染が発見されるまでに少なくとも15年以上のときを経ていることになります。多くは健康診断や人間ドックでの胃X線検査による慢性胃炎、萎縮性胃炎を指摘された場合、胃がんABCリスク検診による血中ピロリ抗体陽性を指摘されたことによって、胃のピロリ菌感染症が疑われることになります。
15年以上の間、ピロリ菌の影響を受けてきた胃粘膜は傷つき、慢性的な炎症を起こしています。
もし、家族にピロリ菌感染者がいる場合は、自身の感染も疑い胃カメラ検査を受けることをおすすめします。早期発見によりピロリ菌除菌の治療を進められれば、胃がんリスクも軽減できるでしょう。
がん以外にも、ピロリ菌が原因となる病気には以下のものがあります。
・慢性胃炎(萎縮性胃炎)
・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・胃MALTリンパ腫
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
また、下記のような症状が出る場合もあります。
・胸やけ
・吐き気
・胃の痛み
・胃もたれ
上記のような症状で受診し、胃カメラ検査によってピロリ菌の感染が発見されるケースもあります。長い間、胃の不良が続く場合には、専門医を受診し原因を明確にすることをおすすめします。
ピロリ菌除菌治療は、抗生物質と胃薬を使用します。
1次除菌療法は、1種類の胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質を1日2回、1週間連続服用した後、内服終了後から1ヶ月以上空けて尿素呼気試験などの検査によってピロリ菌除菌が成功しているかどうかを確認します。1次除菌療法では、約70%〜80%の方が除菌に成功するといわれていますが、失敗するケースもあります。失敗した場合には、2次除菌療法として1種類の抗生物質を変更し、再度除菌を試みます。2次除菌の成功率は約90%と考えられており、2次除菌までで約97%の方が除菌に成功するといわれています。
ピロリ菌除菌が成功していても再感染する方がいることがわかっています。ごく稀なケースですが、次の項目で具体的に説明したいと思います。
ピロリ菌の除菌が成功しても、再感染してしまうケースがあります。その割合は非常に低く約1~2%です。また、再感染の確率は1年後では、0.2%といわれているため決して多いものではありませんが、注意が必要です。
特にピロリ菌を除菌してからしばらく胃カメラ検査を受けていない場合、胃もたれや吐き気や胃の痛みなど、胃の不調がある場合には再感染している恐れがあるのです。
実は、「再感染」という言葉を医師の視点で見たときには、2つの意味があります。
上記で解説したピロリ菌除去後の再感染を指す場合と、ピロリ菌が除菌されていないのに除菌検査のときに陰性反応が出てしまう場合です。
後者は、除菌されたと思っていてもまだ胃にピロリ菌が存在している状態です。
除菌効果を確認する尿素呼気試験検査において、実際にはまだピロリ菌が残っているにもかかわらず検査で「陰性」が出るケースを偽陰性といいます。通常1ヶ月以上明けてから検査を行うべきなのに、検査を行ったタイミングが早い場合や、除菌薬に含まれている胃薬であるプロトンポンプインヒビター(PPI)やカリウムイオン競合型滲ブロッカー(P-CAB)を除菌終了後から除菌判定の間は休薬しなければいけないにもかかわらず、内服したままに尿素呼気試験を受けてしまった場合に起こるといわれています。
ピロリ菌を除菌治療することで、胃がんの発生リスクが30%以下になったと疫学的研究では報告されています。しかし、胃がん発生リスクがゼロになったわけではありません。
ピロリ菌に感染する多くの場合は、子どもの頃に親から感染しています。そうすると、感染に気づいて除去するまでに数十年もの年月が経過しているケースが多いです。
ピロリ菌が胃粘膜に付けた傷は、ピロリ菌を除去したからといってすぐに回復するとは限りません。年月が長ければ長いほど、胃は慢性的に炎症状態を繰り返していることになるからです。除菌治療を施行した年齢が若ければ若いほど胃粘膜の修復能力は高いですが、高齢になってからの除菌療法後では胃粘膜が回復するのに10〜20年以上はかかるものと考えてください。
このように、一度傷ついて弱ってしまった胃粘膜をすぐには元通りにできないことを理解し、胃がんリスクは軽減しているが残っていることを認識してください。ピロリ菌感染によって生じた炎症が萎縮性胃炎と呼ばれ、この萎縮性胃炎の胃粘膜から胃がんが発生しますので、定期的に胃カメラ検査を受けることで胃がんの早期発見をする機会を作ることが重要になります。
ピロリ菌を除菌して10年もの年月が経過したにもかかわらず、その後に定期的な胃カメラ検査を行っていなかったことにより、除菌後の胃粘膜から生じた進行胃がんによって亡くなるケースが報告されてきています。
ピロリ菌が胃がんリスクを高めることや、ピロリ菌の除菌で胃がんリスクが軽減できるという認識は、多くのメディアを通して発信されました。そのおかげで、ピロリ菌に対する関心が高くなり、除菌に意欲的になる方も増えましたが、一方で除菌が成功したという安心感から、胃カメラなどの検査を定期的に受けない方も増えています。
除菌後に胃の不調が出ても「気のせい」「ピロリ菌を除去したから大丈夫」と安心して検査を受けないことが問題になっているのです。
近年の研究では、通常の胃がんとピロリ菌除菌後の胃がんには違いがあることがわかっています。
ピロリ菌除菌後の胃がんは、胃炎が回復して一見正常に見えるような胃粘膜の下に
胃がん細胞が隠れていることが分かってきました。しかしながら一部の胃がん細胞が粘膜表面に顔を出している事が多いので、そのわずかな変化を見つけ出す事が非常に重要と考えられています。通常の胃がんとは異なる形や色であることから、内視鏡検査の経験が豊富で胃がんを熟知した専門医に検査を依頼することをおすすめします。
やはり、最新の内視鏡機器を装備している医療機関で検査を受けるとよいでしょう。
ピロリ菌を除菌することで胃がんのリスクは軽減しますが、除菌が成功したからといって安心するのは危険です。
胃がんをはじめとしてがん細胞は、組織が傷つけられることがきっかけで増殖の際にエラーが起こりそのミスの積み重ねで発生します。胃に存在していたピロリ菌が残した傷によって胃粘膜細胞の遺伝子が壊されてしまっているので、いつがんが発生してもおかしくないのです。
胃がんリスクをこれ以上軽減する事はできませんが、胃がん早期発見するためには年に1度の胃カメラ検査を積極的に行うことが最も重要になります。ピロリ菌除菌後の経過観察として、定期的に胃カメラ検査を行う意識を持つといいでしょう。
胃カメラ検査では、胃がん以外にも胃の健康状態を確認できます。病変が早期発見できれば、手術ではなく内視鏡による切除だけで済むケースがほとんどです。内視鏡治療は入院期間も短く、外科手術と違い体表面に傷つけるような負担をかけることもありませんし、早期治療により費用も抑えられます。
ピロリ菌の除菌治療は、胃がんリスクを軽減することはあっても胃がんリスクをゼロにすることはできません。また、近年ではピロリ菌除菌後10年以上してから胃がんが発見されるケースが増えています。
一度、ピロリ菌によって傷つけられた胃粘膜はすぐには元には戻らず、長期にわたりピロリ菌感染していれば、ピロリ菌を除去しても胃がんリスクが残ります。胃がんの発生を確実に予防することはできませんが、胃がんを早期発見するためにも、年に1度の胃カメラ検査を受けるようにしましょう。
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