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おすすめ内視鏡豆知識
Endoscopist Doctor's Knowledge
過去に胃カメラ検査を受けた方の中には、内視鏡が喉を通る時に「オエッ」となる咽頭反射で苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。最近ではこのような胃カメラ検査の不快感を軽減するために、鼻からスコープを入れる経鼻内視鏡や鎮静剤を使う方法などが主流になってきています。ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しつつ、どれが最もおすすめなのかをご説明します。
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)は、先端に小型カメラが付いた細長い管(内視鏡)を口や鼻から入れて、食道・胃・十二指腸にある潰瘍(かいよう)や炎症、がん、ポリープなどの消化器疾患を診断する検査です。胃カメラ検査は観察するだけでなく、粘膜異常やがんなど疑わしい異常があった場合、組織の一部を採取して詳しく調べることができます。
以前は、胃がん検診の検査として、バリウムを飲む「胃X(エックス)線検査」が主流でした。しかし近年では、胃カメラ検査の機会が増えてきています。胃カメラ検査は胃がんの早期発見に有用な検査という認識が高まっているのです。
病院やクリニックによって異なりますが、胃カメラ検査の種類には、主に経鼻(けいび)内視鏡、経口(けいこう)内視鏡があり、さらに経口内視鏡は鎮静剤を使用する場合、使用しない場合があります。カメラの付いたスコープを、経鼻内視鏡の場合は鼻から、経口内視鏡の場合は口から挿入して胃の状態を検査します。
鼻から内視鏡を入れて観察する胃カメラ検査のことです。経鼻内視鏡の太さは直径約5-6mm程度で、経口内視鏡に比べると半分ぐらいの太さです。
■メリット
経鼻内視鏡は、カメラを挿入する際に鼻から鼻腔を通るため、咽頭反射(内視鏡が喉を通る際、喉の前方や下の付け根を刺激されて「オエッ」となる反応)を誘発しにくいのが最大のメリットでしょう。
■デメリット
デメリットとしては検査の精度が挙げられます。
カメラの画質は基本的にスコープの太さに比例します。経鼻内視鏡はスコープの直径が細いため、一般的に画質が経口内視鏡より劣ります。画質の優劣を左右するレンズのサイズが小さくなり、明るさを決めるライトが暗くなってしまいます。最先端の経鼻内視鏡には、経口内視鏡に近づきつつある画質のものも出てきてはいます。しかし、これらのスコープは非常に高価なため、画質の劣る機器を使っている施設も少なくありません。
また、経口内視鏡より所要時間がかかることもデメリットといえます。スコープが細いことから水や空気を出したり吸ったりするためのノズルも小さく、検査時間が長引く傾向にあります。事前の準備(鼻麻酔や鼻腔拡大)も経口内視鏡よりかなり時間がかかり、苦痛を伴うものとなります。
経口内視鏡はスコープの直径が9mm前後と、経鼻内視鏡の2倍ほどの太さです。口にマウスピースをくわえて口から内視鏡を挿入していきます。
胃カメラ検査が苦手、というのは、この経口内視鏡を挿入するときの嘔吐反射が苦しいからという方がほとんどです。その一方で、経口内視鏡には多くのメリットがあります。
■メリット
経口内視鏡は画質と操作性が高く、疑わしい箇所の見落としが少なくなることがメリットです。さらに病変部をズームで拡大し、詳細な観察ができる拡大観察機能も搭載されています。目視のみでも疑わしい病変を発見しやすく、検査をしながら腫瘍やポリープの切除も可能です。経鼻内視鏡と比べノズルも太いため、水や空気の吸い上げが早く、検査時間も経鼻内視鏡に比べて短縮できます。
■デメリット
先述したとおり、カメラを口から挿入するときの咽頭反射で苦しい場合がある、というのが最大のデメリットです。また、口からスコープが入ると鼻呼吸をしなければならないため、「息苦しい」と感じる方もおられます。ただ、こうしたデメリットは鎮静剤を使用することで回避できます。
鎮静剤を使用すると、ウトウトと眠気が誘引されます。眠っている間に検査をするため、咽頭反射などの身体へのストレスが大幅に軽減されます。スコープが体の中を通っている時も苦しみや痛みもなく、「気づいたら検査が終わっていた」という感じで検査を終えることができます。
胃カメラ検査で病変を見落とさないために重要なのは、胃の中に空気を十分に入れて、胃のヒダを伸ばして隠れている病変を見つけることです。鎮静剤を使わない場合、苦しさから空気を目一杯入れることが難しくなります。鎮静剤を使えば、じっくりと時間をかけて観察することが可能なため、見つけにくい小さな病変、隠れた病変も見落とさずに発見しやすくなります。
鎮静剤は、患者さんの苦痛を軽減して楽に検査を受けられるようにするだけでなく、検査を実施する医療者側からみても、しっかり観察ができるという大きなメリットがあるのです。
関連ページ:「苦しくなく痛みに配慮した胃内視鏡検査」と「経⿐内視鏡検査」は何が違うの?
鎮静剤を使用した場合は、体内から鎮静剤の成分が排出されるまでに時間がかかります。終了後、血圧や覚醒状態、ふらつきの有無を観察し、状態が安定するまで30分~1時間程度休憩する必要があります。帰宅時も万が一の危険を避けるために、自転車やバイク、自動車の運転はできません。
総括すると、鎮静剤を使用した経口内視鏡による検査がもっともおすすめです。
優れた画質の画像で確認できるほか、拡大観察機能の付いたカメラもあるため、疑わしい病変を発見しやすいからです。鎮静剤を使用すれば、カメラを挿入する際の苦しさもありません。
鎮静剤を使用しなくとも、管の細い経鼻内視鏡なら楽に検査を受けられて良いのではと思われがちですが、それだけで選ぶのは早計です。なぜなら、胃カメラ検査を受ける最も大切な目的は「楽に検査を終わらせること」ではなく、「食道がんや胃がんなどの重大な病変をいかに早く見つけるか」「自覚症状もないような初期の病気を見落とすことなく早期発見すること」だからです。
迷った時は、何のために胃カメラ検査を受けるのかを改めて問い直してみましょう。
鎮痛剤の安全性が気になる方もいるかもしれません。基本的に安全ですが、可能性は低いもののアレルギーや血圧低下、呼吸抑制などの副作用のリスクはゼロではありません。そうしたリスクを低減するために、当クリニックでは、事前診察時に薬や食べ物でのアレルギー歴や基礎疾患、既往歴などを確認しています。
また、鎮静剤を適切に使用できる医師やスタッフがいることも重要です。鎮静剤に精通した医師が使用しないと、呼吸抑制や意識がなかなか戻らないなどの問題が生じて危険です。当クリニックでは熟練した医師が検査をさせていただいております。
胃カメラ検査を受ける方の多くは、胃の違和感や不調などの自覚症状がない方です。そのため、ついつい楽に検査を受けたいということばかり意識が向きがちなのではないでしょうか。しかし、本来の検査の目的は「自覚症状もないような初期の病変を発見すること」です。このことを忘れないようにして、適切な検査を選びましょう。
昨今では、さまざまな場所で内視鏡検査が受けられるようになりました。一方で、各々の内視鏡施設の方針や内視鏡医の技術差によって精度にばらつきがあるという現状があります。当クリニックでは、長年内視鏡検査・治療を専門とする経験豊富な医師が、先進的で解像度の高い4K画質の内視鏡を使って、苦しさと痛みに配慮した検査を行っています。
これまで胃カメラ検査が苦手で避けていたという方いらっしゃれば、ぜひ一度ご相談ください。
【関連ページ】当院の最新機器をご紹介しております
先進的な内視鏡検査機器の導⼊
【参考文献】
1)一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 3.1)上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治療
https://www.jges.net/citizen/check-cure/no3-1
2)一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 胃がん検診を受けようと思っていますが、バリウムと胃カメラ、どちらの方がよいですか?
https://www.jges.net/citizen/faq/general_04