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下痢のときは水分を控えるのは間違い?正しい対応を解説します

  • 疾患・症例

世の中には、間違った医療知識が浸透していることがあります。ちょっとしたことでも、間違った対処のせいで命の危険につながる行為もあるので要注意です。

そこで今回は、医学的な常識から一般的に行なわれている危険と思われる事柄についてQ&A形式で解説します。

あなたが日頃常識と思っていたことがいくつあったか、確認してみてください。また、間違った対応をしていたものがあれば、正しい知識を覚えるきっかけにしてほしいです。

1. 下痢のときは水分を控えたほうがいい?

グラスに入った水

下痢は、便の形がない軟便の場合やほぼ水分に近い水下痢の状態で排出されます。そのため水分をとることで、余計下痢がひどくなるのでは?と思われる方が多いようです。

下痢の時に水分をとるとそのまま下痢がひどくなってしまうので、水分を取っていない方がいると思います。その気持ちは理解できますが、水分を控える行為は間違っています。医学的観点からの正しい対応は、失われた水分を補うことなのですが、ポイントは冷たいもの、一度にたくさん水分を取ることは避けて、常温で水分を少しずつこまめにとることなのです。

1-1. 下痢のときの体の状態

医学的に下痢のときの体の状態を解説すると、体は脱水になっている状態です。

下痢では、腸の働きが悪くなり小腸で体内に水分が吸収されずに体外に出てしまうため、体は徐々に脱水状態になっていきます。そんなときに、水分を控えるとますます体の中は脱水がすすみ、血液は濃縮されて濃くなってしまう可能性が高くなります。

脱水によって血液が濃くなると、さまざまな副作用が出てきます。どのような副作用が考えられるかまとめてみました。

・脱水による体力低下、免疫力の低下
・血栓ができやすくなり脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高くなる
・ナトリウム、カリウム喪失による電解質異常による意識障害

血液は、心臓のポンプ機能を利用し体全身に酸素や栄養素を運ぶ働きを持っています。また、血液は血漿と血球からできており、血液の半分以上は血漿でできています。血漿の91%は液体でできているため脱水状態になると、水分が極端に不足しドロドロな状態となり酸素や栄養素を効率良く運べなくなります。

1-2. 脱水時の水分補給におすすめの飲料水とは?

脱水がひどくなると血液だけではなく、消化管の機能も低下してしまうため、水分を補うために点滴が必要になります。皆さんが点滴を必要とする前にできることは、脱水状態を補うような水分補給です。

水分補給に麦茶などのお茶と塩分を一緒にとるという方もいるかと思いますが、それでは不十分です。

水分補給におすすめの飲料水は以下のものです。

・ポカリスエット、アクエリアスなどのスポーツ飲料
・OS-1に代表される体液成分に近い飲料

上記に示した飲料水は、医学的にみてもおすすめです。これらの飲料水をおすすめする理由は3つあります。

・電解質をしっかり含んでいる
・適度に糖質を含んでいる
・体液に近い組成で吸収が早い

体に浸透するスピードが早いため脱水からの早期回復も期待できます。摂取した水分は食道、胃を通過し小腸から毛細血管に入ってはじめて全身の細胞へと行き渡ります。

腸管では、水分がナトリウム(塩分)と一緒になることで上皮細胞、毛細血管へと運ばれます。水分とナトリウム(塩分)に糖分が加わることで吸収するスピードが早くなるのはもちろん、体内に水分を長くとどめておけるのです。

1-3. 水分補給の仕方にも注意が必要

電解質、糖質を含み体液に近い組成でできた飲料水を飲むことで脱水状態からの回復を期待できますが、飲み方には注意が必要です。

避けたい行為についてまとめてみました。

・冷たくして飲む
・がぶ飲みする

水分を冷やして飲む行為は、熱中症による脱水の場合なら、冷たい飲料水によって水分補給と体温を下げる効果があるので間違っていないのですが、下痢によって脱水を起こしているときには、過度の冷たい飲料水は避けなくてはいけません。

熱中症による体温上昇が起こっている時には、皮膚などの外側の体温を下げることに加えて、飲料などで消化管内部から温度低下を図ることは理にかなっているのですが、冷たいものが胃に入ると大腸が反射的に収縮し、直腸に便を送り出そうとする胃・結腸反射が起こり下痢になってしまいます。

そのため、下痢の状態で冷たい飲料水で胃を刺激してしまうと、下痢を悪化させる恐れがあります。水分補給する際には、常温の飲料水を引用することで、胃への過度な冷たい刺激を避けるようにしましょう。

また、一度に大量にがぶ飲みすると吐き気につながるため避けましょう。がぶ飲みによって胃の中に一気に水分が入ると、胃は膨張し胃下垂の状態になり消化するのにより時間が掛かるようになってしまいます。

水分を摂取するときには、コップ半分の量を5分おきのペースでゆっくり飲むようにしましょう。

2. 子どもの水分補給は大人とは違う

リビングでくつろぐ家族

大人よりも子どものほうが、体内組成の水分量が多くなっています。そのため、子どもは大人以上に水分補給が大事になり、脱水にも気を付けなければなりません。

子どもの下痢は重症化しやすいため、早めの水分補給が重要です。熱中症にならないための水分補給の方法も紹介します。

2-1. 子どもの体の水分量とは

人の体の体重に占める水分量は、年齢により異なります。子どもの体の水分量は、70~80%といわれており、大人の約60%よりも多いことがわかります。

年齢と体の水分量の違いをまとめてみました。

・新生児:約80%
・乳児:約70%
・幼児:約65%
・成人男性:約60%
・成人女性:約55%
・高齢者:50~55%

たとえば、体重70kgの成人男性であれば、約42Lの水分(体液)を体内に蓄えています。体重に対し1~2%ほど水分量が減ってしまっても、軽度の脱水症状が現れるといわれています。

体重が少ない子どもにおいては、常に脱水しやすい状態にあるので、暑い日だけではなく日頃から水分補給の習慣をつけておきましょう。

2-2. 子どもの水分補給の注意点

のどが渇いてからの水分補給では実は遅いのです。のどが渇いている場合には、すでに脱水症状が始まっている可能性が高いと考えましょう。

特に下痢によって脱水が予想される場合には、元気がなくなる前の段階から(体力のある間に)しっかりと水分補給することが大切です。元気がなくなると食欲がなくなるケースがありますが、その場合は無理に食べなくても大丈夫です。むしろ、食事よりも水分補給に重点をおきましょう。

食事は1週間くらいとらなくても、体の脂肪や筋肉を燃焼させ体内からエネルギーを作り出すことで体内環境は最低限維持できますが、水分を1日まったくとらないと、体の調子が急速に悪くなってしまいます。

脱水がひどい場合には、急性腎不全や心不全の状態から、最悪死に直結することもあるため、手遅れになる前から水分摂取の準備をしておかなくてはなりません。つまり、日常からの適切な水分補給を行うことを習慣化しましょう。

2-3. 普段から水分摂取の習慣を付けておく

脱水のときだけではなく、普段の生活の中でも早めの水分補給は大事です。

大人であれば、1日に500mlのペットボトル2本くらいを普段から飲み、体の中に十分すぎるくらいの水分を入れておくといいでしょう。普段から体に水分が蓄えられている状態は、究極の脱水予防となります。

水分は食べ物にも含まれているので、3食しっかりと食事をとっているだけでも水分補給になっています。

ただし、心疾患、肺疾患、慢性腎臓病の疾患がある場合には医師の指示にしたがって適切な水分補給をしてください。

3. まとめ

水を飲む女性

一般的に常識と思われがちな行為も、医学的に見ると危険な行為だったという場合があります。

下痢による脱水症状も、水分補給をせずに放置することで命の危険が伴います。

脱水だけではなく、体に関する異常や症状があるときにはかかりつけ医に相談し、自己判断をしないようにしましょう。

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