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Endoscopist Doctor's Knowledge
ピロリ菌という名前を聞いたことがあっても、実際どのようなものか理解していない方は意外に多いです。
ピロリ菌の感染経路やピロリ菌感染によって生じるリスクを知ることで、自身がピロリ菌に感染していた場合でも冷静に対応できるでしょう。
今回は、ピロリ菌とはどのような細菌なのか、感染率の意外なパーセンテージや原因、感染経路とともに解説します。
ピロリ菌の正式名は、ヘリコバクター・ピロリです。
ヘリコバクターのヘリコは、ギリシャ語で旋回(せんかい)、らせんを意味し、バクターは細菌(バクテリア)を表します。ヘリコバクター・ピロリ菌は、らせん状の本体を持ち本体に付いているひげのようなものを回転させながら移動します。
また、胃の出口である幽門のピロルス(ドイツ語)ではじめて発見されたことから、ピロリと名づけられました。
胃ではpHが2と酸性度が強い胃酸が分泌され、通常の細菌やウイルスは殺菌されることが多いのですが、ヘリコバクターピロリ菌は、この強い胃酸の中でも胃に住みつくことができるのです。
ピロリ菌は、1000分の4mmという小さな細菌です。体部分にひげのようなべん毛が数本ついており、胃の中を移動します。
本来、胃には胃酸(強酸性)が分泌されるため体の外から入ってきた細菌やウイルスは、胃に到達すると死滅してしまいます。
しかし、ピロリ菌が死滅せず生き続けられるのは、自分の周りにアルカリ性のバリアを作れるからです。これをウレアーゼ活性といいます。
ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を分泌させ胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。アルカリ性であるアンモニアによって胃酸が中和され、ピロリ菌の周りには胃酸から守るバリアができるのです。
また、ピロリ菌のべん毛は、胃酸が弱いところを察知する役割もあり、より生息しやすい場所を見つけて移動します。
ピロリ菌が発見される前までは、専門医を含め多くの医師や研究者の間では「胃の中に何かがいる」という説がありました。しかし、「あんな胃酸の中で住めるわけがない」という意見が有力とされていたのです。
1983年に、西オーストラリア大学のロビン・ウォーレン名誉教授とバリー・マーシャル教授がはじめてヘリコバクター・ピロリ菌を発見します。きっかけは1979年にウォーレンが、胃炎患者の胃粘膜から未知の菌(後のピロリ菌)を発見したことでした。
ウォーレン名誉教授は、「胃の中に何かいる」という説を解明するために研修医だったマーシャル医師とともに研究をはじめます。
ウォーレンは、結核菌や炭疽菌・コレラ菌なども発見している細菌学の父といわれるコッホが提唱した「その病気のすべての患者にその細菌がいる」(コッホ四原則)から、胃粘膜で発見した細菌が関連していると考えたのでしょう。
コッホ四原則とは、1905年にノーベル医学・生理学賞を受賞した感染症の病原体を特定する際の指針のことです。
何度も失敗しながらも細菌の培養に成功したマーシャルは、自ら培養した細菌を体に取り込みます。細菌を取り込んでから、胃の組織を採り続けると10日目に急性胃炎を起こしたことがわかりました。
急性胃炎を起こした胃粘膜から細菌が発見されたことから、コッホの四原則が満たされ体に取り込んだ細菌によって胃炎が起こることが証明されました。そして、2005年にノーベル賞を受賞するのです。
この実験をきっかけに、潰瘍などはストレスや生活習慣が主たる原因だけではなく、ピロリ菌感染によるものも疑われるようになりました。ピロリ菌が原因で、胃炎になることが証明されたことで、胃炎についての研究が進んでいきます。
研究が進んだことで、慢性胃炎が胃がんのリスクを高くすることもわかってきたのです。
ピロリ菌に感染しても、すぐに潰瘍や胃がんになるわけではありません。
ピロリ菌に感染すると、多くの方が胃炎を起こします。ピロリ菌が胃粘膜に生息し続ける限り胃炎の状態が続き、慢性胃炎に進行します。
慢性胃炎を起こした胃粘膜は炎症によって遺伝子が傷ついているため、塩分量の高い食品やストレスの影響を受けやすく、胃がんリスクが高くなるのです。過度の塩分やストレスなどにより、胃粘膜が障害を受けるとピロリ菌の感染によって引き起こされた遺伝子が傷ついた胃粘膜からは、胃粘膜が修復する過程でのミスが起こりやすく、このミスの積み重ねによってがん細胞が発生し、免疫細胞からの攻撃を逃れた胃がん細胞が増殖することで胃がん発生のリスクが高くなるのです。
胃の違和感や痛みがある場合で、長期間、同じ症状を繰り返しているのであれば、市販薬だけに頼らず一度専門医を受診するといいでしょう。
慢性胃炎を軽減し胃がんリスクを下げるためにも、ピロリ菌感染した場合にはピロリ菌除菌治療を受けることが推奨されています。
ピロリ菌の感染率は、世代によって異なり、簡単に考えれば年齢の数字がそのまま世代の感染しているパーセンテージになります。たとえば、80代であれば80%、40代であれば40%の感染率です。
年代が上がれば上がるほど、感染率のパーセンテージが高くなるのはなぜなのでしょう。
ピロリ菌は、土壌に生息しており、なんらかの原因で体内へ入り込み感染します。主な感染経路をまとめてみました。
・土壌に含まれるピロリ菌がなんらかの原因で口から体内に入ってしまう
・親から子へ感染する(口から口、口移しの食物を介してなど)
・水(井戸水)に含まれるピロリ菌を飲むことで体内に入ってしまう
主な感染経路は、井戸水を飲む行為や感染している人からの口移しによるものといわれています。
ピロリ菌感染の多くは、5歳までの幼少期によるものです。幼少期は、免疫力が未完成なことや汚れた手を口に入れてしまうこと、親が口でかみ砕いた食事(離乳食)を食べさせる習慣がある場合に感染リスクが高くなるといわれています。
近年、下水道の整備により井戸水を生活用水として使用する機会は減りました。また、親の虫歯菌が口移しによって子へ感染するという認識が広く知れ渡ることで、食べ物の口移しもほとんどなくなり、若い世代の感染率が低くなっています。
子供の頃に遊んだ、川の水、森の水、神社の境内の水などで感染したと思われるケースもあります。
日本においてピロリ菌感染者数は、約3,500万人といわれています。多くの場合、ピロリ菌に感染していても自覚症状がないまま長期間過ごしているのです。
ピロリ菌は、いずれかの感染経路によって幼少期に感染すると何十年もの間、胃粘膜に生息することになります。長い年月をかけ胃炎から慢性胃炎へ移行し、胃酸や食事、塩分などから胃粘膜を守る力も弱まります。
それだけではなく、ピロリ菌感染が原因で引き起こされる病気もあるのです。
日本ヘリコバクター学会のガイドラインによると、ピロリ菌が原因となる疾患の治療と予防のため、ピロリ菌に感染した場合は除菌療法を受けるよう推奨しています。
ピロリ菌に感染するとどのような病気のリスクが高くなるのでしょう。
ピロリ菌感染による胃がんリスクは、メディアでも取り上げられ一度は耳にしたことがあるかもしれません。それ以外にも、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃炎のリスクも高くなるのです。
ピロリ菌感染だけが原因ではなく、それ以外の外的要因が加わることでさらにピロリ菌感染を原因とする疾患のリスクが上がります。外的要因は、主にストレスや塩分量の高い食事、胃酸が多く分泌される食べ物の摂取です。
日本ヘリコバクター学会は、ピロリ菌感染によって起こりうる胃がんリスクを軽減するためにガイドラインを提示しています。ガイドライン内で、ピロリ菌除去の対象となるケースをまとめてみました。
・内視鏡検査においてヘリコバクター・ピロリ感染が原因による胃炎と診断された
・胃潰瘍や十二指腸潰瘍が認められた
・胃MALTリンパ腫と診断された
・特発性血小板減少性紫斑病の場合
・早期胃がんを内視鏡で切除した場合
上記の5項目に当てはまる場合には、保険適用でピロリ菌除去治療を受けられます。
それ以外のケースでピロリ菌除去治療した場合は保険適用にならないため、保険を利用して治療を希望する場合には、どのような手順で検査や治療を受ければいいのかを専門医に確認するといいでしょう。
ピロリ菌感染は、幼少期(5歳まで)に起こります。しかし、胃の不調に気づきピロリ菌が発見されるケースは、感染後何十年も経過してからです。
ピロリ菌によって胃粘膜が傷つくことで、胃炎から慢性胃炎が引き起こされます。慢性胃炎によって胃粘膜が障害され遺伝子が傷つくことにより胃がん細胞が発生し、免疫細胞から逃れて増殖してしまうと胃がんになってしまうのです。
胃の不調があれば、ピロリ菌感染が原因かもしれません。痛みや違和感がある場合などは、我慢せず専門医に相談しましょう。
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