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食道がんの治療ってつらいの?治療法と術後の経過について解説

  • がん

皆さんは食道がんについて、どのようなイメージを持たれていますか?胃がんや大腸がんについて耳にすることはあっても、食道がんについて知っている方は少ないのではないでしょうか?

食道がんは、胃がんや大腸がんと比較すると患者数は少ないですが、消化器系だけではなくその他のがんと比較しても、治療が大変ながんといわれています。食道がんの中でも特に進行食道がんの治療は、手術自体も大変ですが、術後の生活にも大きな影響を与えるので、がんの中でも「治療が大変ながん」といえるでしょう。

食道がんは治療に際してさまざまなリスクを抱えるため、何よりも早期発見が大切です。また早期発見するためには、定期的に検診を受けることが重要ですが、どういった医療機関で検査を受けるのかも重要です。

今回は食道がんの治療法と治療が大変だといわれる理由、早期発見するための注意点について解説します。

1. 食道がんとは?

喉に違和感のある高齢男性

食道がんとは、食道の内側を覆っている粘膜の表面に悪性の腫瘍ができる病気です。がんが食道の壁の粘膜内にとどまっている場合は「早期食道がん」、粘膜の下にある粘膜下層にとどまっている場合は「表在型食道がん(ひょうざいがたしょくどうがん)」、それよりも深い筋肉の層まで広がっている場合は「進行食道がん」と分類されます。

食道には、臓器の外側を覆う漿膜(しょうまく)という膜がないため、隣接する臓器への直接浸潤と食道周囲のリンパ節に転移しやすいのが特徴です。そのため、進行食道がんの場合は、気管支や大動脈への直接浸潤と粘膜下層や筋層内にあるリンパ管や血管を介して転移し、周囲のリンパ節だけではなく全身にがん細胞が散らばっていくリスクが高くなるのです。

1-1. 食道がんの症状とは?

初期の食道がんは、自覚症状がほとんどありません。がんが進行してくると、食道の内側が狭くなり飲食中の胸の違和感や飲食物がつかえるような感じが出現します。また、がんが食道の周りにある気管支や大動脈に広がっていくと背中や胸の痛み、体重の減少をきたし、反回神経への浸潤があると咳や声のかすれなどの症状が現れます。

食道がんは進行しないと症状が出ないので、完治するためには早期発見がとても重要です。

1-2. 食道がんのリスクが高い人の特徴

進行食道がんの治療はかなり手術の難易度も高く、また手術困難と判断された場合の抗がん剤や放射線治療も大変であると言えます。食道がんを早期発見するためにも、食道がんの罹患リスクが高い人の特徴を知っておきましょう。

食道がんのもっとも注意すべきリスクは、喫煙と飲酒です。近年の研究結果からは特に飲酒の影響が大きいといわれており、アルコールを飲んで顔が赤くなる方は要注意です。アルコールを飲んで顔が赤くなる方は、フラッシャーと言われアルコールが体内で分解されるときにできるアセトアルデヒドを分解しにくい体質といわれています。この体質の方が大量に長期間飲酒をすると、発がんリスクが高くなると考えられているのです。

つまり、喫煙している、フラッシャーで飲酒量が多い、飲酒歴が長い、食道がんになった家族がいる方は、食道がんのリスクが高いといえます。

2. 食道がんの検査方法

男性医師

食道がんの検査は、2段階に分けて行われるケースがあります。1つ目は食道がんを確定するための検査です。2つ目は、食道がんの進行度を診断する検査です。食道がんの確定検査には、上部消化管内視鏡検査や上部消化管造影検査が行われ、進行度を診断する場合は、この2つの検査に加えて、必要に応じて画像検査が追加されます。

2-1. 上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査は、内視鏡で粘膜の色や凹凸を観察する検査です。病変が見つかった場合は、組織を採取します。目で直接見られるので、がんの位置や大きさ、数や深さを確認できます。

2-2. 上部消化管造影検査

上部消化管造影検査とは、バリウムを用いたレントゲン検査です。がんの位置や大きさ、食道の狭さなど食道全体を観察します。早期食道がんは平坦な病変が多く、上部消化管造影検査では診断することが困難です。

2-3. 超音波内視鏡検査

超音波内視鏡検査は、内視鏡の先端に超音波装置がついており、食道壁の構造を観察できる検査です。がんの深さや周囲の臓器、リンパ節に転移していないかなど、上部消化管内視鏡検査よりも詳細に調べることができます。

2-4. 病理検査

病理検査は、上部消化管内視鏡検査で採取した組織を顕微鏡で観察し、がん細胞がどこまで広がっているのかを確かめる検査です。病理検査は術前診断と術後診断のどちらにも行われるとても大切な検査といえます。

2-5. CT検査・MRI検査

CT検査はX線、MRI検査は磁気を使用して、体内の断面図を確認する検査です。食道以外の臓器への転移の有無や食道がんの進行度を診断するのに、もっとも重要な検査でもあります。

2-6. 超音波検査

超音波検査は、エコー検査とも呼ばれます。食道がんの検査の場合、食道以外にも甲状腺や気管、頸動脈などへの浸潤の有無を調べます。

3. 食道がんの治療法

内視鏡

昔は内視鏡の治療が不十分だったため、治療後さらに追加で外科手術や食道全体を取り除く治療が必要でした。しかし、現在は医療技術が進化し、早期の食道がんであれば、内視鏡治療だけで治せるケースもあります。これが早期発見のメリットといえるでしょう。

3-1. 内視鏡治療

内視鏡治療は、上部消化管内視鏡で食道の内側からがんを切除する治療法です。内視鏡治療の対象となるのは、上皮内がんなどの早期食道がんであれば内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による完治が期待できます。内視鏡治療で治療できない病変の場合は外科手術が考慮され、胸腔鏡下食道切除術(VATS-E)が考慮されます。切除したがん細胞は、病理検査に出し、詳細を調べます。

3-2. 手術

がんの根が深くなると、リンパ節へ転移するリスクが高くなります。もし内視鏡治療で治療を行ったとしても、術後の病理検査で転移のリスクが高いと判断されると目に見えないレベルでがん細胞が広がっているケースもあるため、追加で外科的な手術が行われます。

進行食道がんは全身にがん細胞が散らばっているリスクが高くなるため、リンパ節自体を切り取る手術や「リンパ節郭清(りんぱせつかくせい)」と呼ばれるリンパ節を含む周囲の組織を切除する手術が必要です。

食道がんの手術は8時間〜10時間かかり、手術時間が12時間に及ぶ膵臓がんの次に大変といわれています。食道の再建である「胃管(いかん)」は、胃を下から持ち上げて、食道の代わりとなるように機能再建をする治療で、食道がんの術後は相当痩せる方がほとんどです。

4. 食道がんの手術後、元の生活に戻れるのか?

手術

食道がんの手術後、元の生活に戻ることは難しいでしょう。食道は縦に長い臓器であるため、がんの位置にもよりますが、亜全摘といって食道全部を取り除くケースも少なくありません。

食道は食べ物の通り道なので、食道を取り除いた場合、胃管によって新たに食べ物の通り道を作る必要があります。胃管によって食道の代わりに筒状の通り道はできますが、胃が持ち上げられただけなので、食道が食べ物を胃に送る蠕動波(ぜんどうは)のような働きは保てません。

胃の病気になり、胃を全摘出していたりするケースでは、小腸で食道の代用をする場合もあります。切った小腸を埋め込むようなイメージですが、食道の再建手術は、手術の時間が長くなること以外にも、胸の中の手術なため体の表面だけではなく、開胸・開腹手術で肋骨を切る必要があります。

5. 食道がんの手術に伴うリスク

病室

食道がんの手術にはリスクが伴います。外科手術を行った場合は、ICUから一般病床、次にリハビリが必要なので、基本的に1か月〜2か月の入院が必要です。入院が長期間に及ぶだけではなく、肺炎、消化管を縫い合わせた箇所がうまくつながらない縫合不全(ほうごうふぜん)、出血、声のかすれなどのリスクが起こります。

縫合不全では、つなぎ目の部分が狭くなる場合があり、そうなるとうまく飲食物を飲み込めないので、内視鏡を用いた拡張術を行います。バルーンと呼ばれる風船のようなものを挿入して膨らませ、狭窄部を広げる処置が必要です。

6. 食道がんを早期発見するための注意点

男性医師

食道がんを早期発見するためには、いくつかの注意点を知っておきましょう。

6-1. 定期的に上部消化管内視鏡検査を受ける

アルコールで顔が赤くなる方や長期的な飲酒をしている方は、定期的に上部消化管内視鏡検査を受けることが大切です。早い段階で食道がんを見つけられれば、内視鏡治療が可能なため治療も外科手術ほど大変ではありません。

6-2. 経験豊富な医師に検査してもらう

検査を受けても、医師が病変に気づけなければ、がんを発見することはできません。つまり、検査を実施する医師がどれだけの食道がんの診断経験や治療実績を持っているかが重要です。

経験豊富な医師は、病変を見てがんを疑い、診断できるスキルが備わっています。鎮痛剤を使用して体の負担を軽減する医療機関も多くありますが、それだけではなく、経験豊富な内視鏡専門の医師がいる医療機関がおすすめです。

7. まとめ

健康診断

初期の食道がんは自覚症状がないため、自覚症状を感じたときには進行しているリスクが高くなります。食道がんを早期発見するためには、定期的な上部消化管内視鏡検査が大切です。

また、検査を受けるだけではなく、病変を見つけられる経験豊富な医師と検査設備が充実している医療機関で検査を行うことが大切です。

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