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大腸がん・胃がんを早期発見・早期治療することの重要性を解説

  • がん

最近、胃カメラや大腸カメラの検査を受けたという方が増えています。

当院で発信しているYouTubeでも、がんの早期発見には内視鏡検査を強くおすすめしています。内視鏡検査以外にも、がんを見つけるきっかけとなる検査はいくつかありますが、早期発見・早期治療を行うには、内視鏡検査が一番有効です。

今回は、胃がん、大腸がんを早期発見・早期治療することの重要性を解説します。

1. 胃がんとは

胃のイラスト

胃がんは、早期胃がんの段階では自覚症状がほとんどありません。

胃がんを発見する方法には、下記の2つがあります。

・胃レントゲン検査
・胃内視鏡検査(胃カメラ)

厚生労働省では、胃がんリスクを下げるため50歳以上を対象とした胃がん検診を推奨しています。症状がなくても定期的に検診を受けましょう。

「ただの胃痛だから市販薬を飲んで様子を見よう」という行動は危険かもしれません。

早期胃がんは、自覚症状がほとんどありませんが、出血や痛みがあればなんらかの病変が隠れている可能性が高いため、すぐに消化器専門医を受診しましょう。

胃の粘膜表面は、痛みを感じにくい構造なため、痛みを感じるということは、粘膜下層までのがんが進行していることもあるのです。

2. 大腸がんとは

大腸がん

大腸がんは結腸や直腸に発生するがんですが、良性のポリープ(腺腫)ががん化して発生するタイプと正常な粘膜が直接がん化するタイプがあります。

胃がん同様に、大腸がんにおいても早期の段階では、自覚症状はほとんどありません。大腸がんが発見されるきっかけは、血便が多いです。便の表面に血が付く、便器に血が付くなどから医療機関を受診し、がんが発見されることがあります。

大腸がんは進行すると、粘膜からの出血が持続するため慢性的な貧血状態になることがあります。そのため、めまいやふらつきが頻回に起こることがあります。また、がんによって大腸が塞がれてしまうと、便が排出しづらくなるため便が細くなります。

大腸がんが大腸を完全に塞いでしまうと腸閉塞(ちょうへいそく)が起き、激しい腹痛や吐き気の症状も出ます。

3. なぜ内視鏡医は早期発見・早期治療にこだわるのか?

指をさす男性医師

胃がん、大腸がんは、早期発見が重要な疾患です。内視鏡医が考える「早期」というのは、内視鏡治療が可能な小さな病変である超早期の発見を指します。

2019年のがんの罹患率を見てみると、男女総数でもっとも多いのが大腸、次いで肺、胃と続きます。また、2021年のがん死亡率を確認してみると、男女計で1位肺、2位大腸、3位胃となっており、大腸がんや胃がんにかかる方が多く、加えて大腸がんや胃がんで亡くなっている方が多いことがわかります。

このデータから多くの方が、「胃がんや大腸がんになると死亡する確率も高くなる」と思うでしょう。実は、罹患率の高さや死亡数の多さも内視鏡検査を受けていない結果、という見方もできるのです。

胃がんと大腸がんは、超早期で発見できれば完治も可能な疾患です。

3-1. 胃がん・大腸がんの早期発見は生存率が高い

胃がんのステージⅠで発見された場合の5年生存率は、96.3%です。

大腸がんでは、がんが大腸粘膜内に留まるものとされるステージ0で発見された場合の5年生存率は97.7%で、ステージⅠの場合でも95%です。

このデータからわかる通り、胃がんも大腸がんも超早期で発見できれば生存率も高くなります。

また、胃がんや大腸がんは、膵臓がんや胆道系のがんと比べると完治する可能性が高いのです。

3-2. 胃がんと大腸がんの死亡数が多い理由

胃がんと大腸がんの死亡数が多いのは、検診や人間ドックなどの検査を受けていない方が多いということが考えられます。

検診や人間ドックで行われる胃がん発見につながる検査は胃レントゲン検査、大腸がんの発見のきっかけになるのが便潜血検査です。

これらの検査は、がんによる死亡率を下げるといわれていますが、内視鏡治療で完治に至る超早期のがんの発見はなかなかできません。検査の特性上、超早期のがんの発見が困難な検査です。

4. 内視鏡検査で胃がん・大腸がんを超早期発見した場合のメリット

楽しく食事をする高齢夫婦

胃がんや大腸がんを超早期で発見し治療ができ、かつ病理所見で完治と診断された場合は、がんで死亡するリスクを回避できたといえます。また、超早期発見により、胃や大腸の機能を失わずに完治できる可能性が高いです。

完治できれば、治療前とまったく同じ生活が送れます。

がんになった場合で完治が見込め、体表に傷が出来ず、治療後の生活に困難をきたすことがないのは胃がんや大腸がんだけといってもいいでしょう。

4-1. 胃がんや大腸がん以外のがん

膵臓がん、胆のうがん、乳がん、子宮がんなどは、どんなに早く発見できても臓器の一部を切除や開腹手術が必要になり、なんらかの影響が生じます。

開腹手術をすれば腹部に傷跡が残りますし、体表面の臓器を一部切除するのであれば見た目も変わることが考えられます。

内視鏡で完治可能な大腸がん・胃がんは粘膜もしくは粘膜下層のがんを薄く切除するだけになるため、体への影響がなく数週間程度で傷も治り、機能も回復します。また、開腹手術を行わないため腹部の傷もありません。

患者さん本人も内視鏡画像を見なければ、治療が行われたかわからないほどです。

5. 大腸がん・胃がんの内視鏡検査での早期発見の実例

病気を発見する男性医師

ここで紹介するのは、下記の事例です。

・ピロリ菌除菌後の早期胃がん
・早期でごく小さな胃がん
・大腸粘膜内がん(早期大腸がん)

上記のがんは、ごく小さいがんであるため内視鏡治療で完治可能です。

5-1. ピロリ菌除菌後の早期胃がん

ピロリ菌除菌除後の早期胃がん

胃がんの原因は、ピロリ菌感染による慢性胃炎からのがん化がほとんどです。胃がんリスクを下げるためにもピロリ菌除菌治療は有効ですが、ピロリ菌除菌治療後に胃がんを発見することは、難しい場合があります。

ピロリ菌除菌治療後の胃粘膜は、炎症が緩和されると超早期の胃がんの表面が周りの粘膜と同じように変化してしまうため、病変もわかりづらくなり内視鏡でも発見することが困難になってしまうのです。

この症例は、内視鏡でわずかな凹みでしか発見できません。胃レントゲン検査では発見できないでしょう。早期に発見でき、内視鏡ですべての胃がんを切除し、わずか1時間で完治しました。

進行した胃がんは、開腹手術によって胃の一部を切除します。開腹手術に比べ内視鏡治療は、体にかかる負担をかなり軽減できます。それ以外にも、内視鏡治療であれば、術後の胃の回復も早く、機能はまったく変わりません。

5-2. 早期でごく小さな胃がん

小さな胃がん

この症例は、周囲の正常粘膜との段差はほとんどなく、胃レントゲン検査では絶対に発見できません。早期胃がんでこのように小さいものであれば、開腹手術の必要もなく内視鏡治療で10〜30分程度で完治できます。

ただし、胃がんの内視鏡治療の場合は、必ず入院が必要です。

5-3. 大腸粘膜内がん(早期大腸がん)

大腸粘膜内がん

この症例は、早期大腸がんの中でも「粘膜内がん」と呼ばれるものです。粘膜内がんは、大腸粘膜の表面の一部にわずかながんがあるものを指します。

ポリペクトミーやEMRという治療が可能で、日帰りで受けられます。

ポリペクトミーは、大腸の粘膜にできる腫瘍を切除する方法です。10ミリ以内の病変であれば、ポリペクトミーが行えます。

EMRは、病変の下に生理食塩水などを注入し盛り上げ、その後スネアと呼ばれるワイヤーでポリープで絞め、焼き切る治療です。

粘膜内がんで小さいものであれば、わずか5分の内視鏡治療で切除でき完治できます。5〜10分程度の内視鏡治療で切除できる早期大腸がんは、大腸粘膜も数週間で回復し便通にも影響はありません。

6. 内視鏡治療ができない大腸がん

病室

内視鏡検査で発見されたがんはサイズやがんの深さによって、その場で内視鏡治療できるものとできないものがあります。

早期大腸がんでサイズの小さいものであれば日帰りで治療が可能ですが、粘膜下層剥離術(ESD)で対応するような大きな大腸がんの場合は、総合病院や大学病院での入院治療が必要です。

ただし、大腸の壁の一部を切除するだけであれば、術後の傷も短期間で回復し便通に影響も出ず、将来の癒着の心配もありません。

進行した大腸がんの場合は、内視鏡治療はできず開腹手術を行います。入院治療となり、大腸の一部を切除、大腸をつなぎ合わせる手術が必要です。切除する場所によって便通にも影響が出ますし、癒着の心配もあります。

腹部にも傷が残るため体の負担だけではなく、精神的負担を与えてしまうことも考えられます。

7. まとめ

男性医師

大腸がんや胃がんは、早期発見することで生存率も高い疾患です。さらに超早期で発見できれば、内視鏡治療で完治も可能で治療前と同様の生活を送れます。

大腸がん、胃がんともに早期では自覚症状がないため、超早期でがんを発見するには内視鏡検査を受けるほか方法がないといっても過言ではありません。

大腸がんや胃がんは、内視鏡検査を定期的に受けることで早期発見が期待でき、超早期で発見できれば完治も可能です。

ぜひ、内視鏡検査を受けて大腸がんや胃がんから自身の命を守ってください。

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