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Endoscopist Doctor's Knowledge
食道がんとは、食道の内側の粘膜から発生したがん細胞が大きくなったものを言い、具体的には、重層扁平上皮(粘膜上皮)からがん化してきたものを指します。
厚生労働省の人口動態調査によれば、令和3年(2021年)の食道がん(食道の悪性新生物)による死亡者数は全国で10,958人(男性8,864人、女性2,094人)となっています。
では、実際どのような人が食道がんになりやすいのでしょうか。
今回は、食道がんにかかりやすい人の特徴や食道がんのリスク、食道がんを予防するにはどうしたらよいかについて解説していきます。
ここ10年ほどの研究で、食道がんになるリスクはいろいろと解明されてきました。以前は食道がんの原因として、主に「喫煙」と「飲酒」と言われていましたが、現在食道がんのリスクは、確実に「アルコール」であると言われています。
アルコールが体内に入ると代謝と呼ばれる分解が行われますが、その際にアセトアルデヒドという物質が分解産物として生成されます。このアセトアルデヒドは発がん性があり、アルコールを摂取する際に分解する力が弱い人の場合、アセトアルデヒドが蓄積されて唾液などを経由し食道に流れ込んで炎症を起こしてしまうことがあります。その慢性的な炎症によって遺伝子が傷ついてしまい、食道がんができてしまうのです。
実は食道がんに関して日本人は欧米人とは異なる大きな特徴を持っており、食道がんのリスクには人種の影響もあると言われています。
たとえば、白色人種に代表される欧米人はアルコールを分解する力が非常に強い人種です。一方、日本人を含めた黄色人種は、アルコールに弱い人種であるという特徴があります。近年の研究により、黄色人種のおよそ半数ぐらいがアルコール摂取により顔が赤くなると言われており、食道がんの発がんリスクが欧米人と比べて非常に高いと考えられています。
アルコールに強いか弱いかは、遺伝子の組み合わせによって決定されます。
アルコールによって顔が赤くなる人をフラッシャー、赤くならない人をノンフラッシャーと呼びます。
たとえばアルコールを分解できない遺伝子の型を2つ持っている人は、アルコールにとても弱く、すぐ顔が赤くなってしまったり、お酒を全く飲めないといった特徴があります。
また1つは分解でき、もう1つは分解できないといった遺伝子の型を持っている人は「ヘテロ」と呼ばれます。ヘテロの特徴として、アルコールは飲めるものの、飲むことでアルコールに耐性ができてしまい、次第に顔の赤みが取れてしまう特徴があります。
そのため、本当に顔が赤くなる人かどうかを確かめるには、医師と話し合いをすることが必要となります。ただし注意点として、医師から「顔が赤くなることがあるか?」を問われた際に、現在顔が赤くなるかどうかではなく、お酒を初めて飲んだ20歳前後の当時顔が赤くなっていたかどうかを答える必要があります。
この飲酒によってアルコール耐性が付いてしまい、顔が赤くならなくなった人は特に食道がんのリスクが高いです。理由として、顔が赤くならないことでたくさんお酒を飲んでしまいがちなことが挙げられます。食道がんのリスクはアルコール摂取量によるところが大きく、顔が赤くなる人で耐性が付いてしまった人の「長期間にわたる大量飲酒」が食道がん最大のリスクとなります。
なお、まったく飲めない人はアルコールを飲みませんし、お酒の強い人は分解できる力がもともと強いので、食道がんになるリスクはかなり低い状況にあります。
食道がんのリスクはお酒の量によりますが、圧倒的に女性より男性の方が食道がんのリスクは高いです。先ほど紹介した厚生労働省の人口動態調査でも男性は女性の4倍の死亡数となっていることからもわかります。
また、年齢を重ねた人のほうが飲酒量は多くなりますし、アルコール濃度が濃いお酒が好きな人も増えるため、食道がんリスクはさらに高くなります。特に「60歳以上の男性」は要注意です。
この記事を読まれている人の中にも、毎日飲酒しているという人はいらっしゃることと思います。そもそも飲酒の習慣があると食道がんのリスクは高くなるのでしょうか?
これについては飲むお酒の量によるところもあり、飲酒を毎日しているからといってがんになりやすいか、そうでないかを測ることはできません。ただし、1日一升瓶1本(1.8L)ほどのお酒を飲むような場合にはリスクが高くなると考えてよいでしょう。
では、飲酒量が多い人は飲酒量を控えたり、場合によってはやめたほうがよいのでしょうか?
やはり大量の飲酒によって、アルコール性肝障害、肝硬変、肝がんへ進行する可能性や、急性膵炎を発症するリスクも高まります。休肝日を設けたり、一日の摂取量を減らしてみる工夫は必要でしょう。
そこで悩んだら、まずは食道に病気がないかを調べるために消化器内科を受診してみることをおすすめします。
医師の問診を受け、リスクをしっかり把握したうえで、カメラを受けてみるのがよいでしょう。食道は筒状のものなので、がんが成長して内腔を飛び出してくるほどの症状が出ている人の場合、発見された段階でかなりがんが進行しています。
早期がんの段階で食道がんを見つけるには、症状が出ていなくても検査を受けることが重要です。
実際にはどのような症状が現れると食道がんのリスクが高いのでしょうか。
これについては逆流性食道炎の症状と類似しており、食道がんと逆流性食道炎に共通となる「胃酸が上がってくる症状」や「食道が詰まり食べ物が戻ってくる症状」が現れると食道がんのリスクが出てきます。ただし2つは非常に似ているため、精密に検査しないと症状だけで区別することは難しいとされています。
食道がんと逆流性食道炎との大きな違いとして、「違和感や飲み込めないだけなのか」「そもそも食べたものが通らないのか」にあります。ものが通らないとなると吐くしかなく、食道がんが隠れているリスクが非常に高いです。
食道がんがどのような症状として現れるかというと、のどに違和感があることはほとんどありません。食道入り口に違和感があるケースは少なからずありますが、ほとんどが中部食道から下部食道でのがんが圧倒的に多いです。
そのため、胸のあたりにつかえた感覚があるのが大きな特徴となります。食べたものがつまっているだけでは水を飲めば改善できますが、がんがあるとつかえがとれないので、食べたものが通過するのを待つか、吐いてしまうかして無くならない限り症状が取れません。
すでに食道に大きなかたまりがあるような進行がんの場合、がん細胞が大きくなると深層(外側)へ広がり、気管や大動脈、心臓などの臓器に直接広がり浸潤していきます。そのようなケースで剥離できない状態だと、遠隔転移やリンパ節転移がなくても、局所進行がんの手術ができない場合もあります。剥離できない場合は、抗がん剤治療や放射線治療などを行うこととなります。
切除出来ないと判断された進行食道がんでは、放射線治療と抗がん剤治療が多くなります。
放射線治療の場合、治療が効きすぎて穴が開いてしまう穿孔や出血など、生命にかかわるような重篤な合併症をきたすリスクが非常に高く、慎重な対応が取られます。
一方の抗がん剤治療の場合、治療により腫瘍が小さくなってステージが下がれば手術が受けられる場合もあります。
ちなみに食道がんの手術の場合、手術時間は8~10時間程度かかります。
切り取って無くなった食道部分を再建するために胃を引っ張り上げる、また小腸を持ち上げて間を埋め合わせる、といった方法が取られるなど、非常に侵襲度の高い手術が行われます。
よって、進行食道がんになる前の早期発見が大事になってきます。
食道がんにかかりやすい人の主なリスク要因については「アルコール」であることはお伝えしてきたとおりです。
ですから、食道がん予防のために、まずアルコールで顔が赤くなるタイプなのかどうか自分の体質を知ることから始めましょう。
・初めてお酒を飲んだ20歳ぐらいの頃は顔が赤くなっていた
・年齢を重ねアルコール耐性が付き、飲酒量が増え長期間飲んでいる
という人は食道がんのリスクが高いため、一度医師の問診を受けてみるとよいでしょう。
また、のどや胸のあたりに違和感やつかえる感じがある人は、早めに検査を受けましょう。食べ物を食べると吐いてしまう人はかなりの危険信号です。すぐに消化器内科でカメラを受けることをおすすめします。
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