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Endoscopist Doctor's Knowledge
日本人がかかるがんの中でも、いま最も多いのが大腸がんです。がんの発症は、私たちの日々の生活習慣に大きく影響を受けており、特に大腸がん増加の原因となっているのが食生活の欧米化や、身体活動量が減っていることとされています。逆に、健康的な生活習慣を取り入れることで大腸がん発症のリスクを大きく下げられることも分かっています。
今回は日本人に増えている大腸がんから身を守るために、大腸がんにならないための生活習慣を知りましょう。
国立がん研究センターが公表している最新のがん統計によると、日本人に最も多いがんが大腸がんです(男性2位、女性2位、総数1位 ※2019年罹患数)。さらに大腸がんは患者数が多いだけでなく、死亡数でも肺がんについで2位となっています。高齢化もあいまって、がんは1981年以降日本人の死因の第1位ですが、中でも大腸がんは年々増え続けています。
大腸は結腸と直腸からなる長さ1.5〜2mほどの臓器で、胃で消化された食物は、小腸で栄養が吸収されたあと大腸に送られ、大腸で水分が吸収されて便として排出されます。
大腸がんは、この大腸の内側の細胞が異常に成長し、塊(腫瘍)を作る病気です。この腫瘍が悪性である場合、それが大腸がんと診断されます。日本人は特にS状結腸と直腸の部分にがんができやすいといわれています。
大腸の粘膜に発生したがんは、進行するに連れて大腸の壁に深く潜り込むように広がっていき、大腸の壁の外まで到達すると、腹腔(ふくくう:お腹の中の空間)内に散らばって更に広がります。また、大腸の壁の中を流れるリンパ液や血液の流れに乗って、肝臓、肺、リンパ節など別の臓器に遠隔転移し、命をおびやかします。
がんは一般的に年齢が高くなるほどなりやすくなるので、「加齢」もがん発症のひとつの要因ですが、それを除けばがんの原因は大きく2つです。
ひとつには、両親から受け継ぐ遺伝的な体質です。私たちの体を構成する細胞の中には、体の設計図である「遺伝子」があります。生まれつき特定の遺伝子に病的な変異が生じてしまうことで、がんになりやすくなってしまうことが知られています。
ただし、この遺伝的な要因でがんになる人は全体の5〜10%程度と多くはありません。がんを引き起こす原因の大半は、「生活習慣」です。私たちが行っている日々の生活習慣が積み重なって細胞の遺伝子に傷をつけ、そこからがん細胞が発生します。
国立がん研究センターが公表している「科学的根拠に基づくがん予防法」では、がんを防ぐための健康的な生活習慣を行うことで、最大で4割ほどがん発症のリスクを下げられるとしています。
中でも大腸がんの発症リスクを高める生活習慣としては、不健康な食生活、アルコールの過剰摂取、喫煙などが明らかになっています。
〈大腸がんのリスクを高める要因(生活習慣)〉
大腸がんの発症リスクを下げるためには、次のような生活習慣を意識することが大切です。
■赤身肉や加工肉を減らし、野菜や果物を摂る
高脂肪の食事や肉類を食べる頻度が高まるなど、食生活の欧米化が日本人の大腸がんの増加に深く関係していると考えられています。
肉類のなかでも、特に赤肉(鶏肉以外の牛、豚、羊などの赤身肉)を多く摂ることは、大腸がんのリスクを高めるとされています。ヘムと呼ばれる赤身肉に多く含まれる赤い色素や、肉を高温調理する際に生成される物質に発がん性があります。
国立がん研究センターの予防研究グループが、国内の約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについての研究の結果を発表しています。
女性では毎日赤肉を80グラム以上食べるグループで大腸がんのリスクが高く、男性では鶏肉も含む肉全体を毎日100グラム以上食べている人にリスクの上昇がみられました。また、ハムやソーセージなどの加工肉も大腸がんの発症リスクを高める食材とされており、食べ過ぎには注意が必要です。
大腸がんにならないためにはバランスの良い食事を心掛け、特に野菜や果物を多く摂り、食物繊維を豊富に摂取することが推奨されています。赤身肉や加工肉を食べるのは適度に抑え、その分のタンパク質は魚や植物性の大豆製品など増やすとよいでしょう。
また、少し意外なところかもしれませんが、コーヒーが大腸がんリスクを下げる可能性があるということも分かってきています。
■お酒は適度に
アルコールはさまざまながんのリスクを高めることが分かっていますが、大腸がんの発症リスクも高めます。お酒の成分であるエタノールと、そこからできるアセトアルデヒドという物質の両方に発がん性があります。
少量のお酒でも顔が赤くなる人がいますよね。こういう方は、アルコールとアセドアルデヒドの分解酵素の働きが弱いのですが、日本人の40%くらいがこうした体質といわれており、発がんリスクがより高まるとされています。
以前は少しのお酒ならむしろ健康メリットがあるなどと言われていましたが、最新の研究では、摂取量が増えれば増えるほど健康リスクも高まることがわかっています。お酒は、コミュニケーションやストレス解消といった面でのメリットはありますので、毎日飲む、多量に飲むことは控えて、適度に楽しみましょう。
■禁煙する
タバコといえば肺がんを思い浮かべる人も多いと思いますが、実は喫煙は大腸がんを含む、10種類ものがんのリスクを高めることが知られています。タバコには70種類もの発がん物質が含まれています。
また、最近は加熱式タイプのタバコに変えたという方も増えているかと思います。こうした加熱式タバコは、従来の紙巻きタバコに比べて有害物質が少ないとメーカーは宣伝していますが、多くの発がん物質の中では一概に少ないとは言えないとの調査結果もあります。
禁煙することで、大腸がんをはじめとするさまざまな病気のリスクを低減することができます。もし今、喫煙しているなら、禁煙を検討することを強くお勧めします。
■適度な運動を生活に取り入れ、肥満を避ける
定期的な運動は体重管理に役立ち、大腸がんのリスクを下げます。
2008年に国立がん研究センターが公表した研究結果では、男女とも身体活動量が多い人ほど、大腸がん(結腸がん)を発症するリスクが下がることが示されました。
運動によって肥満の改善や免疫の働きがよくなること、体を酸化させて老化やがん発症にもつながる活性酸素の産生を抑えること、また便の腸管の通過時間が短縮されることなどが大腸がんの予防につながっていると考えられています。
ただし、激しすぎる運動は逆に免疫力を低下させて活性酸素も増やし、がんの原因になる遺伝子の損傷につながるため注意が必要です。厚生労働省は、以下のような運動を推奨しています。
18〜64歳 | 65歳以上 |
●毎日60分 →歩行や同等の身体活動 ●週1回60分 →息が弾み汗をかく程度の運動 |
●毎日40分 →歩行や同等の身体活動 |
毎日の生活に適度な運動を取り入れ、健康的な体重を維持することが大切です。
食生活、運動、禁煙といった生活習慣は大腸がんの予防につながりますが、がんの発症を100%防ぐことは困難なため、早期発見を心がけることも重要です。
大腸がんは早期発見し治療すれば、治癒率は高いがんです。しかし、初期の段階では症状が出にくく、自覚症状から早期発見することが難しい病気です。
症状がない段階で大腸がんを発見するためには、定期的な大腸がん検診が効果的です。大腸がんは、大腸の粘膜から直接発生するタイプと、良性のポリープの一部が悪性になってがんになるタイプがあります。そのため、ポリープを放置すると大腸がんのリスクが高くなってしまいます。
40歳を過ぎたら、年に一度大腸がん検診を受けましょう。便に血液が混じっていないかどうかを調べる便潜血検査も有効ですが、大腸ポリープや初期の大腸がん、小腸に近いところにがんができた場合の出血が見つけにくいため、そうした場合には大腸内視鏡(大腸カメラ)が有効です。大腸内視鏡ならポリープをその場で取ることもできます。
大腸がんの予防には、健康的な食事、適度な運動と体重管理、禁煙が重要です。生活習慣を見直すことで、大腸がんのリスクを減らすことが可能です。また、万が一大腸がんになってしまったとしても、早期発見によってがん完治が目指せます。早期発見のためにも定期的な大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
当院では、鎮静剤を使用して苦しさの少ない高精度な大腸内視鏡検査を行っており、全国から患者さんが来院されています。質の高い検査をご希望の場合は、お気軽にお問い合わせください。