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Endoscopist Doctor's Knowledge
がんは一般的に高齢者の病気と思われていますが、がんの種類によっては必ずしもそうではありません。特に、性別によって注意するがんや気をつける年代は大きく変わってきます。今回は男女別に、がんのリスクと予防や早期発見のポイントを見ていきましょう。
体の構造から主要なホルモン、脳の働きや生活習慣まで、男性と女性には違い(性差)があるとされています。こうした違いは健康面にも影響を与えていて、かかりやすい疾患やその原因、注意する年代など、男女によって違いがあることが明らかになっています。
国立がん研究センターが公表している最新のがん統計(※1)によると、日本人に最も多いがんは大腸がんですが、男女別で見てみると男性の1位は前立腺がん、女性の1位は乳がんとなっています。また死亡数が最も多いのは肺がんで、男性の1位は同じく肺がんですが、女性の1位は大腸がんであり、かかりやすさ、死亡数それぞれトップ5を見ても、男女で大きく違っていることが見てとれます。
我が国では、1年間でおよそ99万9千人ががんと診断されます(※1)。男女別で見てみると、男性が56万6千人、女性が43万3千人で、約6対4で男性が多くなっています。
ただし、これは全ての年代で見たときの数字です。
40代以下の比較的若い年代、働き盛りの年代だけで見てみると、がん患者さんの7割が実は女性なのです。
その理由は、女性特有のがんが若い年代から増加することが一因です。
年代別のがん罹患率(かかりやすさ)を見てみると、男性はほとんどのがんが50代以降に増加しはじめるのに対して、女性は乳がんや子宮のがん、卵巣がんなど女性特有のがんが30代、40代から増え始めます。こうした特徴を踏まえて、特に女性は早い時期から注意し、早期発見に努めることが大切です。
※がん罹患率は人高10万人対。子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんの合計
がんには肺がんや胃がん、大腸がんなど、男女に共通するがんがある一方で、男性・女性特有の臓器に発症するがんがあります。代表的なものが、男性では前立腺がん、女性では乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんです。それぞれのがんの特徴やリスク要因を知っておくことで、予防や早期発見に役立ちます。
■男性特有のがん
前立腺がん
男性のみにある臓器である前立腺にできる、日本人男性にもっとも多いがんです。50代以降で増えてくるがんで若い年代での発症は多くありません。前立腺は膀胱の下に位置し、尿が出にくい、排尿後すっきりしない、夜間にトイレに立つ回数が多いなどの症状があるため、こうした症状があれば医療機関を受診しましょう。腫瘍マーカーのPSA検査も早期発見に役立つ場合があります。
[特徴]
■女性特有・女性に多いがん
乳がん
日本人の女性にもっとも多いがんです。30代から増加をはじめ、40代半ば〜後半にはピークとなります。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが発症に関係しているとされ、初潮が早い、閉経が遅い、出産経験がないといったことがリスクを高めるとされています。高脂肪の欧米型食生活や肥満を避けること、40歳以上では2年に一度乳がん検診を受けることで予防や早期発見につながります。
[特徴]
子宮頸がん
性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが、発症原因のほとんどを占めています。HPVに感染してもほとんどの場合、ウイルスは自然に排除されますが、持続感染した一部の方が10〜20年かけて発症するとされています。子宮頸がんワクチンによる予防や、子宮頸がん検診での早期発見が可能です。
[特徴]
子宮体がん
子宮の入口付近にできる子宮頸がんに対して、子宮の内側にできるのが子宮体がんです。発症には、乳がんと同じくエストロゲンという女性ホルモンが影響しているとされており、出産経験がない、肥満などの方はリスクが高まります。有効な検診はありませんが、進行する前に症状が出ることが多いため、不正出血などの症状が少しでもあれば早めに医療機関を受診することが大切です。
[特徴]
卵巣がん
女性の卵巣にできるがん。早期では症状が表れにくく、また現時点で有効な検診もないため、早期発見・早期治療が難しいがんです。排卵回数が多いほど危険性が高まると考えられており、初潮が早い、閉経が遅い、妊娠・出産経験がないなど、排卵の機会が多い人はリスクが高まる傾向にあります。
[特徴]
一方、男女に共通するがんでも性別によって発症原因やリスクが違う場合があります。日本人に多い上位トップ3のがんについて、近年の傾向や要因、対策を見ていきましょう。
大腸がん
大腸がんは日本人がかかるもっとも多いがん(男女合計1位)で、罹患数は男女とも2位となっています。さらに死亡数で見ても男性は2位、女性は1位で(※1)、性別に関わらずもっとも注意するがんのひとつです。男女とも30〜40代から増加し始め、高齢に従って右肩上がりで増えていきます。
日本人の大腸がんが増えている要因として、生活習慣が影響しているとされています。野菜をあまり取らない肉中心の食生活、過度な飲酒、喫煙、運動不足などが大腸がんのリスクを高めます。
大腸がんは早期では自覚症状が出にくいものの、定期的ながん検診により早期発見が可能です。さらに早期発見し治療すれば、治癒率は高いがんです。
40歳を過ぎたら、年に一度大腸がん検診を受けましょう。便に血液が混じっていないかどうかを調べる便潜血検査も有効ですが、より詳しく大腸を検査するには大腸内視鏡(大腸カメラ)による検査が有効です。
肺がん
肺がんは日本人がかかるがんの第2位です。男女別で見てみると男性で罹患数4位、死亡数1位、女性では罹患数3位、死亡数2位と、男女とも患者数、死亡数が多いがんです。
男女とも50代から増え始め、高齢になるとともに右肩上がりで増加します。
肺がんは喫煙による影響が大きく、従来は男性に多いがんでした。しかしながら近年は喫煙者が減る一方で、喫煙とは関係ないタイプの肺がんが特に女性で増加しています。タバコ以外の原因としては、近年の研究から女性ホルモンなどの影響が有力視されています(※2)。タバコを吸わない方でも、50歳以上になったら定期的ながん検診を受け、早期発見に努めることが大切です。
胃がん
胃がんは日本人がかかるがんの第3位です。男女別では男性で罹患数、死亡数とも3位、女性は罹患数4位、死亡数5位と、男性のほうがややリスクが高くなっています。男女とも40代後半から増え始め、高齢になるとともに右肩上がりで増加します。
日本人の胃がんの原因のほとんどを占めるのが「ピロリ菌」への感染です。ピロリ菌の感染経路は衛生環境の悪かった時代の井戸水、親からの口移し(唾液)などと考えられており、5歳以下の幼児期に経口で感染するとされています。
ピロリ菌に感染すると慢性胃炎を起こし、胃がんの原因となります。国の指針に基づく胃がん検診は胃部X線検査と胃内視鏡検査(胃カメラ検査)が選択できますが、ピロリ菌の有無や早期胃がんを発見するためには、胃カメラが優れています。40歳以上になったら定期的な胃カメラ検査を受けましょう。
(まとめ)
一口にがんといっても、男性か女性かによってそれぞれのがんの原因や注意すべき年代が異なることがご理解いただけたかと思います。
ご自身の性別に応じた適切ながんの予防と早期発見の方法について正しい知識を持ち、生活習慣の見直し、早期発見のために定期的な検査を受けましょう。
当院では、男女両方に多いがんである胃がん、大腸がんの早期発見に有効な、高精度な胃内視鏡検査(胃カメラ検査)、大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を行っております。がん早期発見を望む方は、お気軽にお問い合わせください。