あなたががんになる確率はどれくらい？年代別にがんの症例を紹介します

国立がん研究センターが公表している最新がん統計では、2019年のデータで新たに診断されたがんは999,075例（男性：566,460例、女性：432,607例）で、およそ100万人の人ががんになっています。そのうちがんで亡くなった人は2021年のデータで381,505人(男性:222,467人、女性:159,038人）です。

今回はがんになる確率について、また年代別のがんの症例について詳しく解説していきます。

1. がんになる確率

現在、日本人が一生のうちがんと診断される確率は男性が65.5%、女性が51.2％となっており、2人に1人ががんになる時代です(2019年データによる)。またがんで亡くなる確率は、男性が26.2％(4人に1人)、女性が17.7%(6人に1人)となります。つまり、がんと診断されても早期発見や、適切な治療を施すことで亡くなる確率を下げることができるのです。

がんの中にはダイエット、運動、禁煙、禁酒などの生活習慣の見直しにより予防することが可能なものがあります。しかし、いくら気をつけたところで絶対にがんにならないというのは不可能なことです。がんにならないように予防対策をすることは大事ですが、がんの早期発見のためには、がん検診をすることが重要です。

2. 年代別のがんの症例

ここからは、年代によって異なる「消化管」のがんの発生状況や症例について見ていきたいと思います。

2-1. 20代の場合

20代では食道がんや胃がん、大腸がんはほとんどありません。国立がん研究センターのがん統計データによると、現在20歳の男性が10年以内に何かしらのがんと診断される確率はわずか0.3％、20歳女性の場合は0.5％と非常に少ないです。とはいえゼロではありませんので、定期健診は忘れずに受けるようにしておきましょう。

2-2. 30代の場合

30代に入るとわずかですが胃がん、大腸がんの症例を見ることがあります。特に大腸がんの場合は、家族歴がある人は注意が必要です。

2-2-1. 大腸がんの症例(30代女性)

会社の健康診断の便潜血検査で陽性となった30代の女性。人生で初めて大腸内視鏡検査を受けたところ、隆起性の病変(大腸がん)が見つかりました。内視鏡治療ができない病変と診断され、すぐに総合病院に紹介となり、外科的手術を受けることとなりました。リンパ節転移も認められ、手術後には抗がん剤治療も行いました。

この患者さんの父親も大腸がんであったため、遺伝性大腸がんだった可能性もありますが、会社の健康診断で便潜血検査の項目がなければ、大腸がんに気づかず、数年後亡くなっていたかもしれません。家族に大腸がんにかかった人がいる場合には、積極的に若いうちから大腸内視鏡検査を受けることがおすすめです。

2-3. 40代の場合

40代になると同年代の友人や同僚にがんにかかる人が増えてきます。がんが気になってくる年代ですので、定期的な検診を受けて常に体の状態を把握しておきましょう。また、すでに症状がある人は消化器内科を受診して、内視鏡検査を受ける必要があるか医師と相談しましょう。

2-3-1.胃がんの症例(40代男性)

以前からピロリ菌陽性を指摘されていた40代男性。それまで治療は行わず放置してきましたが、胃の不調を訴えて医療機関を受診。その時に初めて胃内視鏡検査を受けたところ潰瘍性病変があったため、生検を行いました。その結果、胃がんと診断されました。早期胃がんでしたが内視鏡治療適応外だったため外科的手術となりました。幸いリンパ節転移はなく、手術後は定期検査のみで大丈夫でした。

もしも、定期検査等でピロリ菌がいるとわかった際には、すぐに胃内視鏡検査を行い除菌治療を行いましょう。その後は1年ごとの胃内視鏡検査による定期検査を行うことをおすすめします。

胃の調子が悪いケースで、胃内視鏡検査を行っていない医療機関を受診してしまうと、「まずは薬で様子を見ましょう」と言われてしまい、胃カメラをする機会を失ってしまうことがあります。胃内視鏡検査を受ける意思が少しでもあるようでしたら、まず消化器内科を受診しましょう。

2-3-2.大腸がんの症例(40代女性)

便秘気味で数か月前から便に血液が付着していることに気づいた40代女性。不安にかられて医療機関を受診し、初めて大腸カメラを受けたところ、進行がんが認められ、大学病院で外科的手術を受けました。

この人はリンパ節転移もあったため、その後抗がん剤治療を受けました。腫瘍マーカーは基準値内だったものの、このような外科的手術を受けるまでがんが進行していました。ですから、基準値内だったからといって絶対に安心してはいけないということを肝に銘じておきましょう。

また、父親も大腸がんだったとのことで、遺伝的なことを考えて、若いうちから大腸内視鏡検査を行っておけばよかったかもしれません。

2-4. 50代の場合

50代ではがんになる人がぐんと増えてきます。40代よりも胃がん、大腸がん患者が増え、40代ではほぼ見ない食道がんと診断されるケースもあります。

2-4-1.胃がんの症例(50代男性)

検診で胃の造影剤によるレントゲン検査を行った際、胃内に異常が認められ要精密検査となった50代の男性。人生で初めて胃内視鏡検査を受けました。胃の中には異常が認められず、食道粘膜にわずかな発赤が認められ、さらにNBI(狭帯域光観察)モードでは濃い茶色の領域が認められました。

その後の生検で食道がんと診断され、大学病院にて内視鏡治療を受けました。早期食道がんであったこともありわずか25分で手術は終了。その後は再発なく経過しています。

早期食道がんは症状がないため、胃内視鏡検査を行った際にたまたま偶然に発見されることがほとんどです。食道がんのリスク因子である喫煙・飲酒をする人は十分に気をつけましょう。ちなみにこの患者さんは、喫煙歴が20歳から1日20本、また飲酒歴は毎日ビール(700ml)を摂取していました。

2-5. 60代以上の場合

60代以上だと胃がん・大腸がんが一気に増えます。50代ではあまりみられない進行食道がんも増えてきます。食道がんは70代が発症のピークです。この年代は会社の健康診断を受ける機会が減り、がんの発見自体が遅れることもあります。そのため、自ら積極的にがん検診を受けるように心掛けましょう。

2-5-1.進行食道がんの症例(60代男性)

3か月前から食べ物がつまることがあり、最近は肉などのある程度の大きさのものを食べると嘔吐するようになった60代男性。気になって医療機関を受診しました。最後に胃内視鏡検査を受診したのは40年も前のことでした。この人の喫煙歴は20歳から1日25本、また飲酒歴は毎日ビール500mlでした。

胃内視鏡検査で食道に腫瘍が認められましたが、その段階ですでに食道の2/3を腫瘍が占拠。大学病院にて精密検査を受けたところ、リンパ節転移や多発肝転移があり、ステージ4と診断されました。ステージ4の場合では手術を行うことができず、放射線治療や抗がん剤治療が行われることとなりました。

食道がんは急激に大きくなるわけではないため、40歳〜50歳代からの定期検診・内視鏡検査が必要です。症状が出てから検査を受けたとしても、かなり進行している場合があります。

3.まとめ

以上、がんになる確率について、また年代別のがんの症例について紹介しました。

年齢が上がるにつれてがんが発症するリスクは高まります。また若いころ見られないがんも年齢を重ねると現れてくるため、定期的な検診および内視鏡検査を受けることは重要です。また家族にがんに罹患した人がいる場合は、若いうちから積極的に検診を受けるようにするのが良いでしょう。

がんの種類によっては初期症状が出ないこともあり、がんに気づくためには医療機関での検診や診察でしかわからないこともあります。ある日突然がんと診断されても、早期発見・早期治療ができるよう、普段から健康に気を使うだけでなく、定期検診を怠らないようにしましょう。

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