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Endoscopist Doctor's Knowledge
排便の際に便に血が混じっていた、トイレットペーパーでお尻を拭いた際に血が付いた時、「単なる痔かな?」「もしかして大腸がんじゃないか?」と不安を感じる人もいるのではないでしょうか。
大腸がんの症状としての「血便」をただの痔だと思い込み、医療機関を受診せずに放置してしまったためにがんが進行していたとしたら悔やんでも悔やみきれません。
国立がん研究センターの癌統計によると、日本人の大腸がんと診断された数は2019年度データで155,625例(男性87,872例、女性67,753例)、死亡者数は2020年の数値で51,788人(男性27,718人、女性24,070人)にのぼります。大腸がんの罹患数は男女総計で第1位、大腸がんの死亡数は男性が2位、女性が1位(男女総計は2位)と非常にかかりやすいがんとなっています。
そんな大腸がんのひとつの症状として現れるものが血便です。血便が出た場合、しばらく様子を見て血便が治まらず長続きするようであれば、すぐに医療機関を受診して検査を受けたほうが良いでしょう。
今回は、血便はどのようなものなのか、その形状や性質について、また痔と大腸がんとの出血の違いなどについて詳しく見ていきます。
血便、下血は、食道から肛門までの消化管のどこかで出血や炎症が起きていることを示すシグナルです。赤い血便が出るとまず疑われるのは痔か大腸がんです。血便にはいろいろな種類があり、便の色や症状によって色が異なります。消化管のどのあたりで出血しているかその色の違いによってどこから出血しているかがわかる場合もあります。
血便が出ると驚いてしまいすぐに流してしまいがちですが、便の状態を撮影しておいて、医師に診てもらうとより正確な診断を受けられます。
以下は、血便の種類になります。自分の血便がどれにあたるかを症状から判断し、医療機関を受診するなどの行動を取るようにしていきましょう。
鮮血便とは、赤い出血を伴う便で肛門から近い場所から出血した場合に起こるものです。肉眼で確認しやすいのが特徴で、排便した便の中に血が混じっている、トイレットペーパーでお尻を吹いた際に血が付いているなどが確認できます。
鮮血便の場合は痔(痔核および裂肛)であることが大半であるものの、直腸付近から出血した場合には、直腸ポリープや直腸がんの疑いがあります。
粘血便とは、便に粘液や血が混じっているもので、べたべたした便であるといった特徴を持ちます。赤痢といった感染症や炎症性腸疾患であることが多いものの、潰瘍性大腸炎やクローン病の可能性も秘めています。
暗赤色便とは、下部小腸の部分や大腸の奥のあたりで出血をしているために生じる便です。出血してからかなりの時間が経ってしまい、血液が古くなっていることや消化液が混ざっていることで暗赤色の便となっています。
一般的に暗赤色便が出る場合には、感染症や大腸憩室炎などが疑われます。また胃潰瘍や十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂、がんなど消化管上部におけるさまざまな疾患で大量出血した場合も発生する可能性があります。
黒色便とは、便が黒っぽく変色した状態のものを言います。黒色便が出る場合は主に胃潰瘍や十二指腸潰瘍、上部小腸からの出血が起きていると推測できます。なかには胃がんのケースもあるため、黒色便が出た場合にはまず胃内視鏡検査を受診してみることがおすすめです。
痔は、肛門付近で起きる病気を総称して言います。日本人の多くが痔を経験しており、3人に1人は痔に悩んでいるとも言われています。
痔の種類としては主に「痔核(いぼ痔)」と「裂肛(切れ痔)」の2つが知られており、どちらも出血を伴うものとなります。そのため、血便が出た際にはまずこの2つの痔が疑われます。
痔核(いぼ痔)とは痔の半数以上を占める症状で、肛門に大きく負担がかかることによって生じます。いぼができたり、うっ血したり腫れが生じたりするといった症状が現れ、排便時に出血をするようになります。
なお、痔核は発生する場所によって「内痔核」「外痔核」に分けられます。
内痔核は、便秘や下痢を繰り返すことで生じたりデスクワークなど同じ姿勢で長時間座っていると起きやすいといった特徴があり、患者数が最も多いタイプの痔とされてます。内痔核による出血は比較的鮮やかな赤色で、症状によっては便器を赤く染めるほどの出血を伴う場合があります。
また外痔核は、内痔核同様便秘や下痢を繰り返したり、アルコールや刺激物の摂取などが影響して起こる痔です。血流が悪くなり血栓が溜まり腫れたものを血栓性外痔核と言い、痛みを伴うのが特徴です。血栓が破れると出血することがありますが、その後は痛みが軽減していきます。
裂肛(切れ痔)は、便秘や下痢を繰り返すような人がなりやすい痔の症状です。便秘により硬い便を押し出す時や、下痢便が勢いよく出る際に肛門上皮が切れてしまう状態が裂肛です。裂肛が生じた際の血便は鮮やかな赤色が見られますが、出血量はそれほど多くはありません。
ここまで痔の場合の出血については説明をしてきましたが、大腸がんの場合の出血と痔の出血はどこが違うのでしょう?大腸がんの場合、初期症状がほとんど見られません。そのため大腸がんによる血便が見られるケースでは、既にがんは進行しているとみて良いでしょう。特に黒色便や暗赤色便など、肛門から遠い場所から出血していると思われるケースでは精密な検査が必要です。
大腸がんの中でも肛門に近い直腸にできる直腸がんの場合には鮮血便が出ます。そのため直腸がんと痔による出血との違いには気づきにくい可能性がある点には注意が必要です。ただし、裂肛の場合には排便時に痛みが生じるため、痔の可能性が高いという予測も立ちますが、痔核の場合には痛みが伴わないため判断が付きにくく、出血を確認したら医療機関できちんと検査を受けたほうが良いでしょう。
排便時の出血があった際、ずっと放置することなく大腸がんを疑って速やかに検査を行うことはとても大事です。大腸がんは早期に発見し、適切な治療を施せば治せる確率の高いがんです。しかし進行した結果、転移が認められると治る確率が大きく下がり、20%程度となる恐ろしいがんです。そのため、がんを発見する機会を見逃さないように普段から慎重に行動する必要があります。
ここからは、がんを見逃す誤った行動について見ていきます。医師でも誤った行動を取ってしまうことがあるため、以下の内容に当てはまる場合、すぐに消化器内科を受診するようにしましょう。
お腹の不調の場合、ほとんどの人はそれほど大きな問題にならず大丈夫なことが多く、1~2週間ぐらい薬を服用すれば症状が治るのが普通です。ただし、それでも治らない場合は、胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査などを行い、さらに詳しく調べたほうが良い場合があります。
ただし、内視鏡検査を行っても特に何も問題ないという人もいらっしゃいます。とはいえ腹痛の症状が続いているのには何らかの要因があると考えられることから、さらに腹部の超音波検査や腹部CTを行う場合もあります。腹部超音波検査やCTを行うと膵がんや肝臓がんが発見される場合もあります。長期にわたりお腹の調子が悪い場合は、一度消化器内科を受診して調べてもらうようにしましょう。
便潜血検査では約30%~40%大腸がんを見逃してしまいます。陰性と診断されても大腸がんがないとは限りません。直腸に近いほど便潜血検査は陽性になりますが、陰性と診断されて大腸がんでないとは言いきれないのです。
もし血便をはじめとした大腸がんの症状がある場合には、早急に大腸内視鏡検査を受けましょう。ただし症状がない人であっても毎年便潜血検査を必ず行い、陽性となった場合には大腸内視鏡検査を受けることが大事です。
便潜血検査は、大腸がんを見逃してしまう確率の高い検査です。1回より2回の方が陽性になる確率が高くなり見逃すリスクを減らすため、便潜血検査は2回行われます。もし検査で1回のみ陽性となった場合でも、大腸内視鏡検査を受診したほうが安全です。
たまに1回陽性と診断されもう1回は陰性となったから大丈夫だと思い、大腸内視鏡検査を受診しなくても大丈夫だという人もいますが大きな間違いです。1回でも陽性になったら大腸内視鏡検査を受診しましょう。大腸内視鏡検査を受けない限り大腸がんを発見することは難しいです。
以上、血便とはどのようなものか、痔と大腸がんとの出血の違いなどを見てきました。
血便を単なる痔だと甘く考えてはいけません。あの時きちんと医療機関を受診しておけばよかった、内視鏡検査をしておけばよかったとのちのち後悔する進行がんの患者さんは数多くいます。
もし血便をはじめとした何らかの症状がみられた場合や健康診断で異常を指摘された場合は、すぐに消化器内科を受診しましょう。定期的に検査を行うことで、早期大腸がんの発見も可能になります。早期のがんであれば内視鏡治療できることもあります。開腹手術に比べて内視鏡で治療できれば身体的にも精神的にも負担は軽くなります。ぜひ積極的に大腸内視鏡検査を受けてみることをおすすめします。
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