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Endoscopist Doctor's Knowledge
先日、経済アナリストの森永卓郎さんがすい臓がんのステージ4であることを公表されました。すい臓がんは消化器領域の中では非常に見つけにくいがんの代表格とも言われています。
国立がん研究センターのがん統計データでは、すい臓がんと診断された数は2019年には43,865例(男性22,285例、女性21,579例)、亡くなった人の数は2020年に37,677人(男性18,880人、女性18,797人)とされています。なお、すい臓がんの5年相対生存率は8.5%(2009~2011年)となっており、がんと診断されてから長生きするのが非常に難しいことがわかります。
今回は、すい臓がんとはどのようながんなのか、またすい臓がんを早期に発見するためにしておくとよい検査についても詳しく見ていきます。
すい臓がんは、その多くが膵管に発生するがんです。すい臓は胃の裏にある15~18cmほどの実質臓器で、十二指腸の乳頭というところから膵管という管が出ており、そこから膵液を出すのですが、すい臓自体は十二指腸に隣合わせで存在している感じで、何かに引っ付いているわけでなく、ただ管として繋がっているだけの状態です。
基本的にすい臓がんは、膵管の中の細胞ががん化することで発症すると言われています。すい臓の主膵管のがん細胞が大きくなり、狭い管の内腔に突出してきた際に上流が堰き止められてしまい主膵管が太くなる現象が出てくることがあります。その現象を主膵管拡張と呼び、腹部超音波検査やCT検査などでの精密検査の結果、がんが見つかることがあります。
早期のすい臓がんが見つかるきっかけのほとんどが、たまたま何かのきっかけで腹部超音波検査をした、また他の病気で偶然腹部CTを撮ったことで発見されるケースです。ごく稀に狭くなったすい臓の主膵管の上流が太くなることにより膵管内に圧力がかかるため、停滞した膵酵素であるアミラーゼによる急性膵炎という形で症状が出てくることがあり、それで偶然すい臓がんが見つかる人もいます。
症状から見つけるのは難しいがんのため、積極的に腹部超音波検査などで早期に見つけることが非常に大事になります。
一般的にすい臓がんはステージⅣで見つかる可能性の非常に高いがんのひとつで、激痛が起こることで見つかるケースが多いと言われています。痛みに関しては背中の痛み(背部痛)を訴えることが非常に多いです。
では、すい臓がんでなぜ背部痛が出てくるのでしょうか?すい臓の周囲には他の臓器がないため、がん細胞が増大していく中で背中方向への浸潤が起こり、後腹膜と呼ばれる隣の臓器を攻撃していきます。後腹膜には非常に太い神経が通っていますが、その神経にがんが浸潤すると耐え難い激痛が生じると考えられています。
背部痛によって見つかったすい臓がんは、残念ながらかなり進行している状況です。そのため、診断された時点でステージⅣのすい臓がんであることが判明する人がとても多いのです。
ではどうやったらすい臓がんを早期発見できるのでしょうか?
すい臓がんの場合に大事なのは、初期症状がほとんどないという点です。つまり、症状があったから見つかるといったものではないため、検査などで自発的に見つけていく手段しかありません。簡単にできるのが「腹部超音波検査」で主に健診や人間ドックなどでのオプション検査や医療機関受診時の腹部症状があったときの検査となります。腹部超音波検査では、体の表側から超音波を当てることで、胃の裏側にあるすい臓まで見ることができます。すい臓は膵頭部、膵体部、膵尾部があり肥満でない限りはすい臓全体をしっかりと見ることが出来ます。ごくわずかな腫瘍性の変化、具体的にはエコーで見えるような腫瘤がないかどうかを確認することが、すい臓がんの早期発見につながっていきます。ちなみに超音波検査では肝臓、胆のう、脾臓、すい臓、腎臓という臓器を見ることができます。
腹部超音波検査(エコー)自体はおよそ15分から30分ほどで終了します。専門の超音波検査技師が一つ一つの臓器の状況をしっかりと観察していきます。腹部超音波検査も胃内視鏡検査と同様に検査前には絶食しなければいけませんが、大腸内視鏡検査前のように洗腸剤を飲む必要はありません。
食事を摂ってしまうと胃に食物が入った段階で腸管が激しく動き始めます。胆のうもぜん動運動が始まってしまい、超音波検査の画像が粗くなり検査自体に支障が出てしまうことから、通常は腹部超音波検査の6時間前ぐらいから絶食を行うときれいな画像を描出することができます。
腹部超音波検査が難しいのは、脂肪が多い人、つまり肥満で太りぎみの人は超音波が対象の臓器まで届かず、見たい部分が見れないことがあります。すい臓の場合、膵頭部は大丈夫であっても膵尾部までエコーが届かなくて見えないこともあるため、超音波検査だけで内臓臓器の全てが詳細に観察できるものではないことを知っておきましょう。
すい臓がんが心配な人、がんのリスクが高い人は、超音波検査とCT検査を両方受けてみるのがとてもおすすめです。ここでいうがんのリスクが高い人とは「家族歴」がある人を言います。家族歴がある人はすい臓がんの罹患リスクが上昇しますので、ご両親や祖父母、親戚にすい臓がんにかかった人がいる場合は、遺伝的にもすい臓がんのリスクは高いことを認識しておく必要があります。
よってCT検査でしっかりと体の中を撮影して、すい臓に病気がないかどうかを確かめることが大事になります。ただし、CT検査を毎年行うとなると被ばく量の問題もありますので、腹部超音波検査とCT検査を1年おきに行うのが、効果的なすい臓がんの検査方法ではないかと思います。
効率性を求めて腹部超音波検査と内視鏡検査を一度に行おうとした場合、はたして検査は可能なのでしょうか?
結論から言うと、検査自体は可能ですが腹部超音波検査を先に行う必要があります。内視鏡検査の場合には空気や炭酸ガスを入れて胃や腸管を膨らませて検査を行いますが、超音波は空気で減衰してしまうため、内視鏡検査の後に超音波検査をすることはできません。他に空気を含んでいる臓器は苦手としており、一般的に肺に関しては超音波検査を行いません。
実質臓器と呼ばれる肝臓、脾臓、すい臓、腎臓などは超音波検査の良い対象です。また、胃や小腸、大腸、膀胱などの管腔臓器でも空気が入っていなければ超音波検査である程度観察できますが、少しでも空気が入っている状態で検査すると全く見えません。そのため内視鏡検査の前に超音波検査を行えば、検査できる可能性は高いでしょう。
現在早期のすい臓がんを見つけるためのいろいろな研究が進んでいますが、その1つに「N-NOSE」があります。N-NOSEはすい臓がんに関して有用性が高いかもしれないと言われる線虫検査で、がんに含まれるような物質に線虫が反応、見えない部分ですい臓がんの細胞が発出しているようなにおいなどを感じる可能性が高いとされています。
N-NOSEの有用性については賛否両論あり、現時点で有用性があるのは限られたがんの種類によると考えられます。すい臓がんのように通常発見するのが難しいがん種に関しては有用性があるかもしれませんが、胃や大腸内視鏡検査や乳がん、肺がん検診等で積極的に検査を行うことで見つかるがんについては、N-NOSEの有用性は懐疑的であると考えるが現状です。
また、すい臓がんを研究している施設では、内視鏡検査で膵液を採取してがん細胞がないかどうかといった検査を行っているところもあります。特にすい臓に強い大学病院の消化器内科では、たくさんの研究報告がありますし、早期のすい臓がんを見つけたという報告は学会レベルで頻繁に行われています。しかしながら、全ての大学病院で行われているわけはありません。また、一部の研究機関での研究結果にすぎず、医療機関であればどこでも検査できるような段階にはまだありません。
以上、すい臓がんとはどのようながんなのか、すい臓がんの早期発見に向けて行っておくとよい検査について紹介してきました。
すい臓がんの主な症状には、先ほど紹介した背部痛や黄疸、体重減少、持続的な腹痛や食欲不振などがありますが、これらの症状は初期ではほとんど表れないことが多いため、進行してからがんが発見されることが多い非常に恐ろしいがんです。
そのため早期発見がとても大事ですが、一般的な血液検査ではわからないがんであるがゆえ、画像診断と呼ばれる腹部超音波検査やCT検査などで早期発見できる機会を作ることがとても重要です。特に家族歴がありすい臓がんのリスクが高い人は、積極的に画像検査していくことをぜひおすすめします。
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