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おすすめ内視鏡豆知識
Endoscopist Doctor's Knowledge
胃内視鏡検査時に、胃の粘膜に「胃マルトリンパ腫」が見つかることがあります。マルトリンパ腫はあまり耳にすることがない病名のため、不安に感じる人もいるかもしれません。ましてやリンパ腫と聞くと、よく耳にする「悪性リンパ腫」の影響からかさらに不安を増してしまう人も多いでしょう。
今回は、胃マルトリンパ腫について詳しく見ていきます。
マルトリンパ腫(MALTリンパ腫:Mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma)とは、粘膜関連リンパ組織に発生する低悪性度のリンパ腫のことです。このマルトリンパ腫は、小腸・大腸などの消化管や扁桃、甲状腺、肺、唾液腺などの粘膜に関連する組織に発生するものです。なかでも最も頻繁に発生するのは消化管で、全体のおよそ半分を占めます。さらに、消化管に発生するマルトリンパ腫の80〜90%は胃に見られます。
マルトリンパ腫は低悪性度リンパ腫と言われるように、比較的ゆっくりと進行し病状が安定しているリンパ腫であるため、通常は患者さんにとって即座に生命を脅かすような状況を引き起こすことは少なく、治療に対する反応も良好であることが多いです。しかしなかには、大細胞型細胞性リンパ腫といった悪性のリンパ腫に発展するものもあるため注意が必要です。
胃マルトリンパ腫の症状ですが、発症してもゆっくり進行することもあって症状が現れにくいのが特徴です。そのため、胃内視鏡検査などを行ってはじめて胃マルトリンパ腫であることがわかるケースがほとんどです。
なお胃マルトリンパ腫の症状ですが、胸やけや腹痛、不快感、倦怠感、吐血などが現れることがありますが、比較的まれです。
胃マルトリンパ腫の発生原因には、その約9割がヘリコバクターピロリ菌の感染が関与していると言われています。
ヘリコバクターピロリ菌はウレアーゼという酵素を使って胃酸を中和する能力を持っているため、胃の内部で生き延びることができさまざまな病気を引き起こします。ヘリコバクターピロリ菌への感染経路については、いまだはっきりとしたことがわかっていませんが、大部分が経口感染(口を介した感染)ではないかと言われています。日本人のヘリコバクターピロリ菌感染者数は少なくても3,000万人以上いるとされ、50歳以上の感染率が高いのが特徴です。
内視鏡検査や病理組織検査、CTやPET-CTなどによって診断が行われます。
胃マルトリンパ腫の治療においては、先ほどご紹介したように約9割のケースでヘリコバクターピロリ菌の感染が認められるため、まずはヘリコバクターピロリ菌検査が行われ、感染していることがわかった段階で除菌治療が行われます。除菌が成功した場合、およそ8〜9割の人の胃マルトリンパ腫が完治すると言われています。
ピロリ菌除菌にて治療が奏功しない場合は、放射線治療や化学療法などの選択肢があります。
胃マルトリンパ腫はいろんな形態を取るとことから、早期胃がんと区別がしにくいことがあります。内視鏡検査においても白っぽい部分が見られたり、陥没や隆起が見られたり、びらんがみられたりといった具合にて、確定診断ができないものもあります。そのようなケースでは生検を行い病理組織検査に回してより詳しく検査を行います。
内視鏡検査にて異常が見られた場合には、病変の一部を採取して病理組織検査を行います。これによって胃マルトリンパ腫特有の所見が見られるようであれば確定診断となります。
胃マルトリンパ腫の疑いがある場合、病気の進行度を判断するにあたってCTやPET-CTといった画像検査が行われる場合もあります。
胃マルトリンパ腫の主な原因とされるヘリコバクターピロリ菌感染の検査方法としては、大きく分けて「内視鏡を使用する方法」と「内視鏡を使用しない方法」の2つあります。
内視鏡を使用して行われるヘリコバクターピロリ菌感染の検査ですが、
・迅速ウレアーゼ試験
・鏡検法
・培養法
といった検査が行われます。
迅速ウレアーゼ試験とは、ヘリコバクターピロリ菌の存在を検出するための迅速かつ簡便な診断方法です。胃粘膜の生検標本を使用して行われ、ピロリ菌が持つウレアーゼ酵素の活性を利用して診断します。
鏡検法とは、顕微鏡を使用して試料を直接観察し、微生物や細胞の存在や形態を確認する方法のことを言います。細菌や真菌、寄生虫などの病原体の検出や、細胞の異常の観察に広く用いられますが、ヘリコバクターピロリ菌がいるかどうかを検査する際にも行われることがあります。
培養法とは、細菌、真菌、ウイルスなどの微生物や細胞を特定の培地上で増殖させ、その存在や性質を確認する方法です。感染症の診断や微生物の特性を調べる際に広く用いられており、ヘリコバクターピロリ菌がいるかの確認にも使われます。
一方で、内視鏡を使用しない方法におけるヘリコバクターピロリ菌感染の検査ですが、
・抗体検査
・尿素呼気試験
・便中抗原測定
といった方法があります。
抗体検査とは、血液やその他の体液中に存在する特定の抗体を検出することで、過去や現在の感染症の有無を確認する検査です。抗体は、体が感染症に対する免疫応答として生成するタンパク質で、特定の病原体に対するものが測定されます。ヘリコバクターピロリ菌の感染については、血液や尿内からヘリコバクターピロリ菌に対する抗体濃度から判断されます。
尿素呼気試験とは、ヘリコバクターピロリ菌感染を診断するための非侵襲的な検査方法です。ヘリコバクターピロリ菌が持つウレアーゼ酵素の活性を利用して行われます。この酵素は尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する能力があります。尿素呼気試験では、患者さんに尿素を含む試薬を飲んでもらったのち、呼気中の二酸化炭素の変化を測定します。検査薬を飲む前と飲んだ後の二酸化炭素量を比較することでヘリコバクターピロリ菌感染があるかを診断できます。
便中抗原測定とは、便サンプル中に特定の病原体に対する抗原を検出することによって、感染症の診断を行う検査方法です。ヘリコバクターピロリ菌感染を診断するために使用されることがあります。
以上のようにヘリコバクターピロリ菌の感染検査については方法がいくつか用意されており、診断内容や医療機関によって適宜最適な方法が取られます。
ヘリコバクターピロリ菌の除菌は、主に薬物療法によって行われます。一般的に用いられる方法としては三剤併用療法があります。これは2種類の抗生物質(アモキシシリン・クラリスロマイシンまたはメトロニダゾール)と1種類のプロトンポンプ阻害薬(PPI)を組み合わせて使用するもので、7日間の治療期間を要します。
以上、胃マルトリンパ腫について紹介してきましたがいかがだったでしょうか。
胃マルトリンパ腫はあまり耳慣れない病気ではありますが、胃がんの原因とされるヘリコバクターピロリ菌感染が発症における大きなウェイトを占めています。
胃がんになりやすい人の特徴として、ヘリコバクターピロリ菌に感染していることがリスク要因として挙げられます。そのため、胃マルトリンパ腫を発症した場合には、完治したあとも楽観視せず、1年に1回は胃内視鏡検査を行うようにしましょう。
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