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腸内細菌の乱れが肥満の原因に。腸内環境を整えてメタボ予防

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メタボリックシンドロームを招く要因の1つに、腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れがあることをご存知でしょうか? 実は、肥満だけでなく糖尿病と診断された人は特定の腸内細菌が少ないことが報告されています。一方で、腸内環境を整えることで、メタボや糖尿病の予防に役立つこともわかりました。腸内細菌と肥満の関係をお伝えするとともに、健康のカギを握る腸内環境の整え方について紹介します。

腸内細菌と肥満の関係

人の腸内には、およそ500~1000種類の細菌が存在すると言われています。その数は、100兆個とされ、人間1人の腸に棲む腸内細菌は重量にすると1~2kgにもなります。腸内に広がる様子を顕微鏡で見るとお花畑のように見えることから、腸内フローラとも呼ばれます。

腸内細菌は、乳酸菌などの「善玉菌」と、大腸菌などの「悪玉菌」、そしてそのどちらにも分類されない中間の「日和見菌」があり、バランスを保ちながら腸内環境を整えています。最も多いのは日和見菌ですが、悪玉菌に比べて善玉菌が多いバランスを保った状態は、健康的な腸内環境といえます(※1)。

しかし、何らかの原因で悪玉菌が増えると、健康に悪影響を与えます。悪玉菌が過度に増えるといった腸内細菌叢の異常は「ディスバイオーシス(dysbiosis)」と呼ばれ、便通異常や肌荒れなどの軽い症状だけでなく、肥満や糖尿病などを招いたり、悪化させたりする要因になるとされています。

※1)腸内細菌と健康|e-ヘルスネット(厚生労働省)

■メタボリックシンドロームと肥満の違い

メタボリックシンドローム(以下、メタボ)(※2)とは、別名「内臓脂肪症候群」と呼ばれ、内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさることによって、心臓病や脳卒中のリスクが高い状態を指します。

一方、肥満とは、BMI(体格指数)25以上で過度に脂肪が蓄積されている状態です。肥満が原因で健康を害したり、今後、生活習慣病などのリスクが高かったりすることを「肥満症」と呼び、メタボは肥満症の1つです。

メタボというと、単純に肥満であることや、ウエスト周りが大きいことを指すイメージがあるかもしれません。しかし、メタボは単に太っている状態を指すのではなく、内臓脂肪が多く、その影響でさまざまな病気を招きやすい、体にとって危険な状態なのです。

※2)メタボリックシンドローム(メタボ)とは?|e-ヘルスネット(厚生労働省)

腸内細菌が肥満に影響するメカニズム

理化学研究所などの研究チームが行った研究(※3)によると、高脂肪の食生活を続けることで、悪玉脂質とも呼ばれる「トランス脂肪酸」が体内で増えるとされています。さらに、腸内細菌の1種である「フシモナス菌(Fusimonas intestini(FI))」が、腸のバリア機能を低下させる物質を生み出すことで腸内環境を乱し、肥満や高血糖を悪化させる可能性があるとされています。エネルギー過剰で高脂肪な食習慣は悪い脂肪の蓄積を招くだけでなく、腸内環境も悪くしてしまい、それがさらに肥満につながりやすい状態を作ってしまうといえます。

また、米国のシダーズ サイナイ医療センターが行った研究結果(※4)によると、フラボニフラクター(Flavonifractor)と呼ばれる腸内細菌が多い人は、インスリン抵抗性を招きやすく、肥満や糖尿病になるリスクが高いことが報告されています。

インスリン抵抗性とは、食事によって取り込んだ糖を筋肉に取り込んだり、糖をエネルギーとして蓄えたりする働きを持つホルモン「インスリン」の作用が低下した状態です(※5)。インスリン抵抗性が進むと、取り込んだ糖が処理されにくくなり、脂肪細胞に変わりやすくなるため、肥満につながります。また、インスリンの働きが低下すると高血糖の状態が続き、糖尿病を招く原因となります。

※3)Tadashi Takeuchi, et al. Fatty acid overproduction by gut commensal microbiota exacerbates obesity, Cell Metabolism, 10.1016/j.cmet.2022.12.013

※4)Gut Bacteria May Play a Role in Diabetes|Cedars Sinai

※5)インスリン抵抗性||e-ヘルスネット(厚生労働省)

肥満や糖尿病のリスクを軽減する腸内細菌とは

肥満や糖尿病のリスクを高める腸内細菌がある一方で、予防に働く腸内細菌の存在が注目されています。

先にも紹介したシダーズ サイナイ医療センターが行った研究において、腸内細菌の1つである「コプロコッカス(Coprococcus )」は、インスリンの作用を発揮しやすい腸内環境を作る傾向にあることがわかりました。

また、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所や早稲田大学などの研究チームが行った報告(※6)によると、腸内に「ブラウティア(Blautia)菌」が多くいる人は、肥満や糖尿病になりにくい傾向があるとしています。ブラウティア菌は、脂肪の蓄積を抑制する働きを持つオルニチンやアセチルコリン、Sアデノシルメチオニンなどを体内で作りだし、腸内環境を整えて、肥満や糖尿病を予防・改善する可能性があるとして注目されています。

そのほか、理化学研究所や東京大学などのグループが発表した研究結果(※7)では、「アリスティペス(Alistipes )属」がインスリン抵抗性の改善に効果があることが示されています。アリスティペス属は、腸内細菌としてインスリンの働きを妨げる糖類の消費量を増やし、インスリンが働きやすい体内環境を作ると報告されました。

いずれも善玉菌に属するものであり、腸内環境を整えて善玉菌を増やす生活習慣が、肥満予防やダイエットにつながるほか、糖尿病のリスク軽減につながると考えられます。

※6)Oral administration of Blautia wexlerae ameliorates obesity and type 2 diabetes via metabolic remodeling of the gut microbiota|National Library of Medicine
肥満・糖尿病を改善する腸内細菌発見|早稲田大学

※7)Gut microbial carbohydrate metabolism contributes to insulin resistance|nature

善玉菌を増やすには?腸内環境を整える食事のポイント

肥満の予防につながるよう腸内環境を整えるには、食事の見直しが欠かせません。特に意識したいポイントについてご紹介します(※8)。

食物繊維やオリゴ糖の摂取

まずは、すでに腸内にいる善玉菌を増やす取り組みとして、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖の摂取を意識してみましょう。食物繊維は、消化・吸収されずに大腸まで届き、善玉菌の栄養源となって、善玉菌が増えるのを手伝ってくれます。さらに、水に溶けにくい性質を持つ水溶性食物繊維は、糖質の吸収を緩やかにする働きがあることから、食後血糖値の上昇を抑えることで糖尿病予防に役立ちます。オリゴ糖も同様に、善玉菌の1つであるビフィズス菌の栄養源となるものです。こうした善玉菌の栄養源となり、腸内バランスを保つ食品成分を「プレバイオティクス」といいます。

いずれも野菜類や果物類、豆類に多く含まれますが、両方を同時に摂取するのに役立つ食材としては、大豆やごぼう、バナナなどが挙げられます。ただし、食物繊維やオリゴ糖を過剰に摂取すると、便秘や下痢を招く可能性があるため、とりすぎには注意しましょう。

発酵食品の摂取

食事の一環として、腸内環境のバランスを整える働きを持つ乳酸菌やビフィズス菌を取り入れるのも有効です。具体的には、ヨーグルトなどの発酵乳や納豆や漬物などの発酵食品が挙げられます。特に漬物類に含まれる乳酸菌「L.メセンテロイデス」による代謝物には、肥満の予防やコレステロールの合成を抑制する短鎖脂肪酸が多く含まれるとされており、メタボ予防に役立ちます(※9)。こうした腸内環境を改善する微生物を取り入れることを「プロバイオティクス」と言います。

※8)腸内細菌と健康|e-ヘルスネット(厚生労働省)

※9)乳酸菌が作る菌体外多糖による腸内環境改善と肥満抑制―新世代ポストバイオティクス成分 EPS の機能性とシンバイオティクス乳酸菌―|京都大学

乳酸菌を食事に取り入れるとき、どのくらいの量を摂ればいいの?

ヨーグルトや漬物などに含まれる微生物を摂取しても、ある程度の期間は腸内に存在するものの、定着することはないとされています。そのため、毎日摂取することが大切です。肥満や糖尿病を予防・改善することを目的として摂取する場合、ある程度の量が必要だとされています。乳酸菌研究の第一人者 光岡知足先生によると、「乳酸菌は1日1兆」が推奨されているのです。

【関連記事】100~200億ぐらいの乳酸菌では効かない!? 内視鏡医監修「ラクエイド」を試して1年 その効果は?

なお、日本で販売されているヨーグルト(発酵乳)には、1mlあたり1000万以上の乳酸菌が含むことが決められています(※10)。商品によって異なるものの、意外と少ないと感じられるのではないでしょうか。普段の食事にヨーグルトや漬物を取り入れることに加えて、乳酸菌などが含まれる整腸剤やサプリメントなどを上手に活用するのもおすすめです。

※10)乳及び乳製品の成分規格等に関する省令における発酵乳の規格基準等の見直しについて|厚生労働省

【関連記事】「腸内フローラ」と整腸剤の関係

まとめ

肥満になる原因はさまざまありますが、食べ過ぎや偏った食生活などの影響は少なくありません。腸内環境を整えることは、肥満やメタボ、糖尿病の予防にもなり、今後も食事を楽しめる健康な体づくりにつながります。とはいえ、毎日、大量の乳製品や漬物を取り続けるのは大変です。食物繊維やオリゴ糖の多い食材を積極的に取り入れながら、手軽に活用できる整腸剤やサプリメントの活用も検討してみましょう。

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