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Endoscopist Doctor's Knowledge
胃がんのリスクのひとつに「ピロリ菌感染」があります。世界保健機関(WHO)から1994年に発がん物質に認定されています。ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に炎症を引き起こし、長期的には胃潰瘍や十二指腸潰瘍、そして胃がんのリスクが高まることが分かっています。ピロリ菌に感染しないためには、その感染ルートを防ぐことがもちろん重要ですが、もしピロリ菌感染に感染していた場合にも出来るだけ早くに治療することが望まれます。
今回は、ピロリ菌感染の感染ルートや感染した際に起こる症状、またピロリ菌の検査方法について詳しく解説していきます。
ピロリ菌は、オーストラリアのロイヤル・パースの病理医であったロビン・ウォレン医師とバリー・マーシャル医師によって1979年に発見されました。そして1984年、マーシャル医師が培養したピロリ菌を自ら飲み込むことにより、ピロリ菌が急性胃炎を引き起こすことが証明されました。
1994年には国際がん研究機関(IARC)によって、ピロリ菌が最も危険度の高い部類の発がん因子と規定され、リスクが非常に高い感染症と認められたのちに抗生物質による除菌治療が成立しています。人類の歴史上には常に、感染症である細菌やウィルスとの戦いの歴史があり、その中でピロリ菌感染症は比較的新しい感染症といえるのです。
実はピロリ菌に感染したとしても、発熱や皮疹といった特有の症状が出るわけではありません。ピロリ菌感染はあくまで胃の粘膜に起こる感染症であるため胃痛や胃もたれなどの症状がありますが、この症状があればピロリ菌感染であるといった症状はないのです。ピロリ菌は胃の粘膜内に棲みつきますが、胃酸特有の強力な酸から自己防衛するために「ウレアーゼ」という酵素によって生成されるアンモニアを利用し、身の回りをアルカリ性にすることで胃酸を中和させます。自分の周りにバリアを張った状態になるため、胃の中で生き延びることができるのです。
そんなピロリ菌感染は特有の症状はないものの、ピロリ菌感染が長期化すると胃や十二指腸に炎症を引き起こし、次第に症状が出てくることがあります。通常は胃の働きが悪くなることが多く、具体的には胃もたれや食欲低下も起こします。また粘膜の障害が強く出てくると胃痛、潰瘍が起こることがあります。なかでも潰瘍は粘膜面の炎症が強く起こり細胞が壊死してしまう状態で、表面から粘膜の下の方に向かって穴が掘れている状態で、多くは痛みを感じます。
ピロリ菌によって引き起こされる消化性潰瘍は、年齢が若いうちは胃酸の分泌が多いため十二指腸潰瘍に、高齢になると胃酸の分泌が少なくなるため胃潰瘍になりやすいと考えられています。胃における何らかの症状があって医療機関を受診すると、家族歴や生活環境からピロリ菌感染が疑われることは比較的多くあります。しかし、実際に胃内視鏡検査を行ってみると全く違うことも多く、「症状が出たからピロリ菌に感染している」とは簡単に言えないのが現状です。
ピロリ菌の感染力は非常に強いと言われています。ピロリ菌は5歳までの通常幼少期の感染で起こると言われています。ピロリ菌は土壌に生息する菌で、地下水である井戸水からの感染が主たる感染と考えられていますが、両親からの口移しの食事や、唾液を介しての家庭内感染も起こりえます。また、ごく稀ですが成人感染も報告されています。たとえば、ピロリ菌を含んだ大量の水を飲んでしまうことで発症するケースがあり、特に東南アジア等に旅行した時の衛生環境によっては感染することがあります。
また、ピロリ菌に感染した人の吐物からも感染することもあります。たとえば、介護職等に従事している人の場合、感染者の胃の中にいる活動的なピロリ菌を含んだ吐物を何らかの形で直接体の中に入れてしまうような状況がある場合は非常に危険です。かなり稀ではあるものの、ピロリ菌感染は成人でも起こりますので ピロリ菌の感染力はかなり強いと考えられています。
先ほど述べたように、ピロリ菌の感染源については井戸水が感染源と考えられることが多いものの、実は井戸水だけではなく、山の水や川の水、神社やお寺の境内の水といった、世間一般に天然水と言われるような水からも感染症が起きる可能性はあります。特に昨今気温が高いですが、水温が高くなるとウィルスや細菌の増殖は多くなるため、感染症の危険が増幅します。最近、成人における滝つぼでの水遊びで嘔吐下痢症状が大勢の人に生じたというおそらく細菌もしくはウイルスによる感染症が報道されました。つまり、川における遊泳や滝つぼ等での水遊び、普通の海水浴であっても十分な注意が必要なのです。
ピロリ菌に感染しているかどうかを検査する方法ですが、内視鏡を使用する検査方法と使用しない検査方法の大きく2つに分けられます。さらに細かく分けると、内視鏡を使用する検査としては「迅速ウレアーゼ試験」「鏡検法」「培養法」が、また内視鏡を使用しない検査には「尿素呼気試験」「抗体測定法」「便中抗原測定法」があります。
迅速ウレアーゼ試験とは、内視鏡検査の際に、胃粘膜生検材料を用いて行う検査です。ピロリ菌が持つウレアーゼ酵素の活性を利用して胃粘膜から採取した組織を用いて検査キットで判定します。結果を15分程度の短時間で知ることができるため、臨床現場では広く利用されています。
鏡検法とは、内視鏡検査で採取した胃の粘膜組織を顕微鏡で観察し、特殊な染色を行いピロリ菌の存在を直接顕微鏡で確認する検査方法のことを言います。ピロリ菌の形態を直接目視で確認できるため、感染の有無を高精度で診断できるのが特徴です。しかし、偽陽性も多くありその点は注意が必要です。
培養法とは、ピロリ菌を胃粘膜から採取した組織から分離・培養し、菌を直接増殖させて検出する方法です。5~7日程度培養するため結果が出るまで時間がかかる点やコストが掛かる点がネックとなりますが、直接生きたピロリ菌を観察できることができるため、特異性に優れている点が特徴の検査方法です。ピロリ菌を専門的に研究している医学部がある付属の大学病院などでは、抗生剤を使った感受性の検査も行われています。
尿素呼気試験とは、ピロリ菌感染を検出するための非侵襲的かつ特異性に優れた検査方法です。ピロリ菌が持つウレアーゼ酵素の活性を利用し、呼気中のピロリ菌によって産生された二酸化炭素を標識して測定します。結果を1~2日と比較的迅速に得ることができる点や、患者さんへの負担が少ないことから、ピロリ菌感染の診断および除菌治療の効果判定に広く用いられています。
抗体測定法とは、ピロリ菌に対する免疫反応として体内で産生される抗体を検出する検査方法のことを言います。血液や尿中の抗体量を測定することでピロリ菌感染の有無を調べます。抗体が基準値よりも高い値を示せばピロリ菌に感染していることが疑われます。血液検査や尿検査といった比較的簡単に実施できる検査であることから、健診や人間ドックでのオプション検査における初期スクリーニングとして広く利用されています。自治体によっては胃炎の程度を評価するペプシノーゲン法と合わせた胃がんABCリスク検診を行っているところもあります。
便中抗原測定法は、ピロリ菌感染を検出するために患者の便中に存在するピロリ菌の抗原を測定する検査方法です。現在の感染状態を正確に反映し、除菌治療の効果判定にも適していると言われています。患者さんへの負担が少なく、簡単で高精度である点が特徴です。こちらも偽陽性、偽陰性があるので注意が必要です。
ピロリ菌の検査方法は以上のように多岐にわたるため、医師によって患者さんの状態や検査目的によって最適な方法が取られます。正確な診断と適切な治療のためには、しっかりと医療機関を受診して医師から適切な検査を受けることが重要です。
以上、ピロリ菌感染の感染ルートや感染した際に起こる症状、またピロリ菌の検査方法について紹介してきました。
ピロリ菌感染には成人感染もごく稀にありますので「自然の水をそのまま飲まない」「ピロリ菌感染者の吐物を体内に取り込まない」など、ピロリ菌の感染ルートを知っておくことが重要です。
また、ピロリ菌に感染しても特有の症状が出ないことから、検査をせずに放っておくと胃がんや潰瘍のリスクを高めることがあります。そうならないためにも、家族歴でピロリ菌感染者、胃・十二指腸潰瘍、胃がんの人がいる場合は、感染が疑われますので症状がなくてもきちんとした検査を受けることをおすすめします。特に今まで、ピロリ菌検査を受けたことがない人や健診の胃X線検査で胃炎が疑われた人は、胃カメラ検査を含めて、一度検査を受けることをお勧めします。
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