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Endoscopist Doctor's Knowledge
咽頭(いんとう)がんは(咽頭とはいわゆる「のど」のことで、空気と食物の通り道のこと)咽頭の粘膜やその周辺の組織に発生する悪性腫瘍のことです。
咽頭は食道と気管の入口の間に位置し、声を出す声帯や耳ともつながっています。咽頭がんは、その発生部位により、上咽頭がん(じょういんとうがん)、中咽頭がん(ちゅういんとうがん)、下咽頭がん(かいんとうがん)に分類されます。
咽頭と喉頭(こうとう)は、頚部にある2つの別々の器官になります。その違いは明確なのですが、意外としっかりと説明できる方は少ないと思います。
咽頭と喉頭の主な違いは、咽頭が鼻腔と口から喉頭、食道へと続く消化管の一部であるのに対し、喉頭は気管の上部にあることです。
咽頭は、空気と食物の両方が通過しますが、喉頭は空気しか通過しません。つまり口から入っていくと食べ物と空気は咽頭を通過し、空気は喉頭から気管と肺へ、食物は食道へ入ります。
喉頭には声帯があるため、喉頭を通過した空気は、声帯の振動によって音を出します。
初期症状としては風邪に似た症状で現れてきます。のどの違和感や、声がかすれてくるなどです。そして、鼻の症状が出てくることが多くあります。鼻づまり、鼻血、血の混じった鼻水などがその症状です。また、耳の症状も出てくることがあり、耳がつまった感じや聞こえにくさ、中耳炎などがその症状です。
どれも咽頭がんだけに特有の症状ではないため、これらの症状だけでは軽微な症状と思われ、早期発見されにくいと考えられます。
下記にセルフチェックの項目を挙げてみます。
咽頭がんは初期には自覚症状がないことが多くあります。咽頭周囲にはリンパ節が沢山あるため、がんが頚部リンパ節に転移しやすいことがわかっており、そのため首にしこりを自覚して耳鼻科を受診し咽頭がんが発覚する場合があります。
ただしリンパ節が大きくなるだけでは一概にすべて原因ががんであると断定する事が出来ません。ウイルス感染症や、炎症性の自己免疫疾患でも頚部リンパ節が張れることがあり、リンパ節が腫れたのみでは診断が難しい場合があります。
リンパ節にがん細胞が転移して腫れてきたことによりリンパ節が次第に大きくなり、首を触ってみて米粒大、小豆大など丸い塊が指に触れる大きさとして触知するようになります。一般的にリンパ節の長径が1cm以下の場合は、炎症などによるリンパ節の一時的な反応性変化が多く、1.5cmを境に腫瘍性の割合が増加し,2cm以上になると腫瘍の可能性が高くなると考えられています。また、硬さ、可動性、圧痛などのリ ンパ節の特徴にも注意する必要があります。触って圧痛があり、動くようであれば感染症などが考えられ,固くて可動性がなければがんの転移を考える必要があります。
がんが進行した場合には、のど周辺の症状だけではなく、頭痛や物が二重に見えたり、目がみえにくくなってきたりといわゆる脳神経の症状が現れてくることもあります。多くが風邪のような症状や、口内炎のような普段もよく見かける症状として現れることが多く、なかなか症状だけではがんの診断まですることが難しいことがご理解いただけると思います。頚部リンパ節への転移まで至らないよう、早めの発見を心がけることが必要です。
咽頭がんは、その発生部位により、上咽頭がん(じょういんとうがん)、中咽頭がん(ちゅういんとうがん)、下咽頭がん(かいんとうがん)に分類されます。
咽頭がんの原因は実は一つではありません。発生した部位により原因が異なることが知られていて、上咽頭がん、中咽頭がん、噛咽頭がんのそれぞれのがんについて説明していきます。
上咽頭は鼻腔(びくう)の後ろに位置し、鼻と喉をつなぐ部分です。この領域で発生する癌を上咽頭癌と呼びます。
上咽頭癌は、中国や東南アジアなど特定の地域で多く見られます。
上咽頭癌の発生には、 EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)の感染が関連しているとされます。
上咽頭は耳や鼻と繋がる部位なので、上咽頭癌による症状としては、鼻詰まり、鼻血、耳の不快感があります。また、上咽頭の周りにはリンパ節が豊富にあるため、頚部リンパ節の腫れで発見されることもあります。さらに、上咽頭は脳に近い部位でもあるため、脳神経症状として目が見えにくくなる、二重に見えることがあるということもあります。
上咽頭がんは、その場所から手術することが困難な場合が多いため、治療として放射線療法や化学療法、それらを組み合わせた化学放射線治療が主な治療法となります。
上咽頭がんの場合、初期症状が軽いことが多いため、頚部リンパ節の腫れや持続的な鼻詰まりに注意が必要です。
中咽頭は口蓋の裏側から喉頭上部までの範囲を指します。軟口蓋(なんこうがい)という口の上部の奥にある柔らかい部分や、口の奥の突き当たりの壁、口蓋扁桃、舌根(ぜっこん:舌の付け根の部分)が含まれます。中咽頭がんは、この領域で発生するがんです。
中咽頭がんの発症には、喫煙、アルコールの過剰摂取、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染などが関連しています。HPVに関連した中咽頭がんは、予後が良いということが知られています。
中咽頭がんの症状は、 嚥下困難、喉の痛み、耳痛、声のかすれなどがあります。
治療法には放射線療法、化学療法、手術などがあります。病期や腫瘍の大きさに応じて治療法が選択されます。
嚥下時の不快感や持続的な喉の痛みがあれば、中咽頭癌の可能性を考慮する必要があります。
下咽頭は喉頭の上部から食道の入り口までの範囲を指し、この領域で発生する癌です。咽頭がんの中では比較的まれです。
下咽頭がんのリスク因子としては、喫煙、アルコールの過剰摂取があります。食道がんとの関連が高いのもこの下咽頭がんで、食道がんの10%、下咽頭がんの10%に食道がんが合併すると考えられています。
下咽頭がんの症状には、飲み込む際の喉の痛みである嚥下痛、声のかすれ、喉の違和感、耳痛などがあります。
下咽頭がんは、早期の場合には声を出す器官である喉頭を残すことを考慮します。機能を残すことを温存(おんぞん)といい、放射線治療や喉頭温存手術を行うことになります。
下咽頭がんが進行している場合には、手術によって喉を摘出せざるをえないことも多くなります。しかし、QOLを保つために、喉頭温存手術や化学放射線治療を行う場合もあります。
中咽頭がんと同様に、嚥下痛や持続的な喉の違和感があれば、下咽頭癌を疑う必要があります。
咽頭がんの診断と治療は、早期発見が重要です。上記の症状がある場合は、専門医に相談することをお勧めします。
先ほど説明しましたが、咽頭がんは初期の段階では症状が軽微であることが多く、見逃されることがあります。以下の症状が持続する場合は、医師に相談することが重要です。
上記のように、一見軽い症状にみえるものばかりですが、ポイントとしては1ヶ月以上続くなど長引いていることが特徴です。
これらの症状が見られた場合は、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
咽頭がんの診断には、以下のような検査が用いられます。
咽頭や声帯の状態を直接観察します。
がんが疑わしい部位から組織を直接採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べます。
CTやMRI、PETスキャンなどを用いて、がんの広がりや転移の有無を評価します。
これまで述べてきたように、咽頭癌の治療は、がんの進行度や患者の全体的な健康状態に基づいて決定されます。
ここで、それぞれについて簡単に説明します。
咽頭癌は日本人のがん全体としてはまれなものですが、徐々に患者数が増えており決して関係のないものではありません。
自分では大したことのない症状だと思っていても、咽頭がんや喉頭がんなどの思わぬ病気が隠れている場合も考えられます。必要に応じて血液検査、CTなどの検査を受けることが必要です。
今回の記事でご紹介したような症状があれば、まずは耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
耳鼻科で異常を指摘されない場合、飲み込みにくい、のどの違和感の症状が続く場合、受診に迷う場合など、胃酸逆流による胃食道逆流症の可能性もありますので一度消化器内科へ受診をすることも検討してください。