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おすすめ内視鏡豆知識
Endoscopist Doctor's Knowledge
健康診断や病院・クリニックでの大腸内視鏡検査で『大腸ポリープが見つかりました』と言われて、がんなのだろうかと不安に感じたことはありませんか? 逆に、大腸ポリープなら安心だ、良かったと考える方もいらっしゃるかもしれません。一口に大腸ポリープといっても、実は種類によって、がんにつながるものとそうでないものがあることがわかっています。
今回は、大腸ポリープの種類とがん化のリスクや予防のポイントについて、最新の研究結果をもとに詳しく解説します。
大腸がんは、大腸にできた悪性腫瘍のことです。腸の内側の粘膜から発生したがんは、腸管の壁の奥深くへと進行し、やがて腸を塞いだり(腸閉塞)、リンパ節や肝臓、肺などの他の臓器に転移したりして命を脅かします。大腸がんの発生は、大腸にできたポリープが悪性化する場合と、ポリープの状態を経ずに、最初からがんとして発生する場合があると考えられています。
一方、ポリープとは、粘膜がイボ状に盛り上がった病変の総称で、病名ではありません。なかには出っ張りが少ない平坦な形のものもあり、良性のものからがん化する悪性のものまで幅広く存在します。さまざまな臓器にできますが、大腸にできるポリープが「大腸ポリープ」です。
すべての大腸ポリープががん化するわけではありませんが、大腸ポリープが見つかったら、がん化するリスクがどの程度あるかを診断し、必要に応じて早期治療をすることがとても大切です。
大腸ポリープには大きく腫瘍性(次第に大きくなるものや将来悪性に変わる可能性のあるもの)と非腫瘍性のものがあります。さらに、組織の種類などによっていくつかのタイプがあり、がん化のリスク度合が異なります。
主な大腸ポリープの種類と特徴(※2)
大腸ポリープの中でも、特にがん化するリスクが高いとされているのが、腫瘍性ポリープの一種である腺腫性ポリープです。腺腫ポリープのサイズが大きくなるほど、リスクが高まることが知られています。
管状腺腫および管状柔毛腺腫のがん化率(※3)
ポリープが10mm以上の大きさになると、急激にがん化リスクが高まっていることがわかります。ただし、小さくても油断はできません。見た目だけでは判断できない場合もあるため、ポリープの大小にかかわらず、詳しい検査をしておくのが安心です。
また、良性のポリープはがん化するリスクは少ないとされていますが、100%リスクがないとは言い切れません。医師の指導に従って切除、または定期的に経過観察するようにしましょう。
発見時には良性だと判断された大腸ポリープも、時間の経過とともに、がんへと変化することがあります。では、なぜポリープが悪性のがんに変化するのでしょうか。最新の研究によると、腸内細菌が関わっている可能性が示されました。
2024年8月に国立がん研究センターが公表した研究結果(※4)によると、大腸ポリープ(家族性大腸腺腫症/FAP)患者のうち、組織学的悪性度(顕微鏡で見てがん細胞が正常細胞とどの程度かけ離れているか)が変化する患者さんは、短期間で腸内細菌叢が大きく変動し、特に健常者では大腸内にはほとんど存在しない種類の大腸菌がFAP患者さんにおいて非常に増えていることが明らかとなりました。
また、腸内細菌の種類が大きく変動したタイミングで、大腸がんの発生率が上昇していた ことが確認されています。この研究結果から、腸内環境のバランスがポリープのがん化に影響を及ぼしている可能性が示唆されました。
この研究は、ポリープからがんになる過程を短い期間で捉えるために、短期間でがん化しやすい「家族性大腸腺腫症(FAP)」の患者さんを対象として行われましたが、一般的な大腸がんでもがん化のメカニズムは同じであることから、今回の研究結果によって、大腸ポリープががん化するメカニズムの1つとして、腸内細菌の関わりが考えられます。
大腸がんが発生する理由はさまざまありますが、生活習慣や食生活の改善によって腸内環境を良くすることは、大腸ポリープの有無にかかわらず大腸がんの予防に役立つでしょう。
大腸ポリープが大腸がんの原因?大腸がんができる5つのメカニズムを紹介!
前述のとおり、大腸ポリープから大腸がんに変化する要因の1つとして、腸内環境の乱れが関係していると考えられます。大腸がんを予防するには、腸内環境を整え、免疫力を高める生活習慣を取り入れることが大切です。
腸は体の中でも最大の免疫器官と言われ、免疫細胞の約7割が存在するとされています。腸内にある「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」のバランスが崩れると免疫力が低下することで、大腸の粘膜が炎症を起こしやすくなることもわかっています。(※5)
特に 悪玉菌が増えると、大腸内の環境が悪化し、結果としてポリープやがんが発生しやすくなると考えられます。
腸内環境を整えるには、食物繊維を豊富に含む食品(野菜・海藻・豆類など)をはじめ、善玉菌が含まれる発酵食品などを積極的に取るのがおすすめです。より手軽な乳酸菌サプリメントを活用するのも良いでしょう。加えて、適度な運動や十分な睡眠、ストレス解消なども腸内細菌のバランスを保つのに役立ちます。
腸内環境を整えることは、大腸がんのリスクを減らすだけでなく、全身の健康維持にもつながります。日々の生活習慣を見直し、大腸の健康を意識してみてはいかがでしょうか。
また、定期的な大腸内視鏡検査を行うことも大切です。大腸ポリープの早期発見は、切除などによる治療によって、がん化のリスク減少につながります。
大腸がんを予防する最も効果的な方法とは?胃腸のプロが徹底解説
一口に大腸ポリープと言ってもいくつかの種類があり、一部はがん化するリスクがあります。ポリープががん化する要因の1つに腸内環境の乱れが考えられることから、食生活の改善や発酵食品・乳酸菌の摂取、適度な運動、ストレス管理などで、腸内環境を良くすることが大切です。また、大腸ポリープは多くの場合、自覚症状がないため、定期的な大腸内視鏡検査を受け、早期に発見・切除することが大腸がん予防のカギとなります。
「大腸ポリープが見つかったけれど、どうすればいいの?」と悩んでいる方は、まず医師と相談してみましょう。
【参考文献】
1)大腸ポリープとはどんな病気ですか?|一般社団法人日本消化器内視鏡学会
2)BQ3-1大腸ポリープには組織学的に見てどのようなものがあるか?|日本消化器病学会 大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改定第2版)
3)BQ3-2腺腫の担癌率は?|日本消化器病学会 大腸ポリープ診断ガイドライン2020(改定第2版)
Sakamoto T, Matsuda T, Nakajima T, et al. Clinicopathological Features of Colorectal Polyps: Evaluation of the ‘Predict,Resect, and Discard’ Strategies. Colorectal Dis 2013; 15: e295-e300 (ケースコントロール)
4)ポリープの大腸がん化に腸内細菌が関係していた-家族性大腸腺腫症(FAP)から知る大腸がん発生のメカニズム-|国立研究開発法人 国立がん研究センター